さらに悲観すべきことがある。今春にMLB.comが発表したファーム組織ランキングで、エンジェルスは全30球団中28位に位置づけられていた。そして、今回の夏のトレード戦線で手にした有望株と言えば、ノア・シンダーガードと交換した捕手のローガン・オーハッピーだけ。補強予算が限られる中、まだ年俸の低い若手選手たちの奮闘に期待したいところだが、エンジェルスはそれすらもほとんど見込めない状況というわけである。
頼みのトラウトは年齢の影響か故障がちになり、レンドーンも同じ状況。2人が完全復活し、若手も大活躍……という今季開幕前の青写真は脆くも崩れた。期待の若手の一人だったブランドン・マーシュが放出された今、「エンジェルスが来季、コンテンダーになると考え得る理由はまったくない」(『ジ・アスレティック』のキース・ロー)との言葉は誰もが見解の一致するところだろう。
一方でミナシアンGMは「今のチームには素晴らしいタレントの選手がいる。スーパースターたちもいる。彼らを中心に脇を固める選手でチームを構成していきたい」と前を向いているが、この現状で、本当に「素晴らしく才能ある選手たち」だと信じているのだろうか。
ブラム記者は、大谷を「チーム再建のためのゴールデン・チケット」と表現していた。ナショナルズがソトと引き換えに多くのトップ・プロスペクトを獲得したように、大谷もまた、多くの才能ある若手選手をエンジェルスにもたらしただろう。
だが、FA時期が近づけば近づくほど市場価値は否応なく下落する。交換要員の質は下がり、再建はさらに遠のく。ローは「オオタニをトレードに出して再建を一気に押し進める絶好の機会があったのに、エンジェルスはそうしなかった。オフになってアート・モレノがそのことに気付いたとしても、その時にはオオタニのトレードバリューの大部分は消えてしまうだろう」と厳しく指摘している。
球団歴代ワーストの8年連続負け越しが確実なエンジェルス。大谷がいても勝てない中で、今回放出しなかったことを正当化するには、何が何でも来季勝つしかない。そのための唯一の方法は、総年俸を大幅に引き上げ、やぶれかぶれの大勝負に出ることだろう。
そうした勝利への本気の意欲を見せられなければ、「勝ちたい」という強い意志を持つ大谷と再契約することなどできるはずもない。エンジェルスにとって、「大谷がいる最後のシーズン」になる可能性も高い2023年。オーナーのモレノはすべてを懸ける覚悟があるだろうか?
構成●SLUGGER編集部
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だが、FA時期が近づけば近づくほど市場価値は否応なく下落する。交換要員の質は下がり、再建はさらに遠のく。ローは「オオタニをトレードに出して再建を一気に押し進める絶好の機会があったのに、エンジェルスはそうしなかった。オフになってアート・モレノがそのことに気付いたとしても、その時にはオオタニのトレードバリューの大部分は消えてしまうだろう」と厳しく指摘している。
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