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高校野球

大胆な“守備シフト”やエースだけに頼らない投手起用――奇策連発の国学院栃木が前回大会の覇者・智弁和歌山相手に大金星!<SLUGGER>

氏原英明

2022.08.13

 そして6回表、満を持してマウンドに上がった盛永だったが、いきなり1死二、三塁のピンチを招く。だがここでも、国学院栃木は大胆なシフトを見せた。三塁ランナーを無視して右方向のヒットゾーンを狭める選択をして、見事にセカンドゴロに抑えたのだ。結果1点は失ったが、柄目監督は意に介さなかった。

「相手に点が入るとこっちも点が入るという形がこの夏の戦い方だったので、あの場面では強打でロングヒットを打たれた方が絶対嫌でした。後ろに下がっていれば1点で済むかなと。“攻めた”結果です」

 するとその裏、国学院栃木は先頭の槙本嵩大がセーフティバントを成功させて反撃の口火を切り、3番・平井の三塁線への二塁打で同点。さらに鈴木友と長田の連打で勝ち越したのだった。

 さらに8回裏には、無死から平井がダメ押しとなるソロ本塁打。貴重すぎる1点が国学院栃木に入った。

 9回表の智弁和歌山の攻撃では先頭に二塁打を浴びるも、その後は三者凡退。最後は4番・岡西をショートフライに打ち取り、大胆なシフトの完成を知らせるゲームセットとなった。

 柄目監督は試合をこう振り返った。
 
「おそらく(智弁和歌山は)対・盛永で練習してくると予測を立てましたので、受け身の采配より攻めた采配をすることを選手と確認しました。とにかく全員で攻めていくイメージを持つため、こういう選手起用にしました。

 実はコロナで甲子園が開催されなかった(2020年の)夏の地方代替大会で、7回で10人を投げさせた経験を通して、多くの投手を起用していく感覚はつかんでいました。その上で、選手たちとも練習試合で短いイニングをつないでいく起用法を繰り返して、経験を積んできましたので、練習通りできたかなと思います。

 ポジショニングに関しては、(智弁和歌山の)素晴らしいバッターというのは、ヒットゾーンに打つのがうまいので、その打球が飛ぶところに守っていればいいんじゃないというような感覚で(シフトを)敷いています」

 “大金星”というには失礼なくらいの完全勝利だった。

 昨夏覇者を倒しての勝利は大いに自信がついたことだろう。作新学院の栃木11連覇を阻んだ実力は本物。一気に優勝候補に躍り出たナイスゲームだった。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
 
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