専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
高校野球

ダブルエースが休養十分で臨んだ決勝戦――東北初制覇をもたらした須江監督の投手マネジメント<SLUGGER>

氏原英明

2022.08.23

 須江監督は言う。

「野球はコンタクトスポーツだと思います。打者が相手投手に慣れるまでには、少し時間がかかる。だから慣れる前に代えていくことはとても大事なことだと思うんですけど、投手交代にはリスクもあるわけで、そことのバランスは必要になります。でも、私達は育成や勝利の両方を推進したいと思っているので、その中で継投というのは外せない策なんです」

 相手に慣れさせない中で、どの投手で勝負していくかが非常に重要になる。

 チーム内のプライオリティもあれば、相手との相性も見抜かなければいけない。その取捨選択を上手く進めたのが須江監督だった。

 昨今、投手の健康問題が声高に唱えられるようになって、多くのチームが複数の投手を起用するようになった。大前提としては「故障をさせないこと」が第一だが、一方で勝つための戦略として、チームで一番信頼がおける投手を大事な場面で投入するマネジメントも重要だ。

 しかし、現在の高校野球では、大半がそこまでの思考に欠けており、場面に合わない采配をするケースが少なくない。今大会で2番手以降の投手が大量失点したケースが多かったのは、それは投手マネジメントがうまくできていなかったからだ。
 
 決勝戦、仙台育英の先発マウンドに立った斎藤蓉は、中3日でのマウンドだった。

 近年でも、3日を空けて大舞台に上がった投手は他にいなかっただろう。試合の最後を締めた高橋は中1日だったが、大会トータルの球数は143。準決勝での前回登板は37球で済んでいた。決勝を迎える時点で、2人の信頼のおける投手はともに元気な状態だったのだ。

「本当にそれぞれの投手ができることに注力してくれて、背伸びすることなく持てるものを出してくれた。これぐらい投げてほしいなっていうのを全部やってくれたので、監督としては継投を上手くやったというよりは、彼らが全部やってくれたという感覚です」

 須江監督はそう謙遜したが、準決勝の3回の決断がなければ優勝はなかった。東北初の全国制覇は投手陣を巧みに使ったマネジメントの勝利だった。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

【毎日更新!夏の甲子園PHOTO】球児がきらめく「夏の甲子園」のベストショットを一挙公開!
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号