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プロ野球

“世界の王”、“ゴジラ松井”、そして“怪童”中西と徹底比較!検証:「村神様は“史上最強の高卒5年目打者”なのか?」<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.09.01

 一方、最もプレーした時代が近い松井は、高卒5年目の時点でタイトル獲得は一つもない。2年目からコンスタントにシーズン20本塁打を超えてはいたが、30本を超えたのが4年目の1996年が初(38本)。この年はMVPに輝いたものの、タイトルは中日の山﨑武司に1本差でさらわれた。翌97年にも37本を放ったが、この時もドゥエイン・ホージー(当時ヤクルト)にやはり1本差で2位。OPSも、両年とも僅差の2位に終わっており、この時点では“リーグ屈指”ではあっても“最強”のスラッガーではなかった。

 日本プロ野球史上最強打者の王も、高卒5年目の時点ではまだ発展途上だった。最初の3年間は2ケタ本塁打を超えるのがやっと。代名詞の一本足打法を取り入れたプロ4年目から13年連続本塁打王の快進撃が始まったが、「高卒5年目まで」に限れば、まだその片鱗をようやく見せ始めたという段階だ。少なくともこの時期のリーグ最強打者はチームメイトの長嶋茂雄の方で、王は2番手という位置づけだった。

 ただし王の場合、今よりはるかに投高打低の環境でこれだけの数字を残した事実は特筆しておかねばならない。初めてホームラン王となった62年(高卒4年目)のセ・リーグ平均打率は.238(22年は8月31日時点で.248)。3割打者は森永勝也(広島)ただ1人しかいなかった。また、王に次ぐ本塁打2位は長嶋の25本で、王とは13本もの差がついていた。ただ、この事実を加味してもやはり、村上が一枚上手だろう。
 
 となれば、最後の壁は“怪童”中西だけということになる。

 中西の成績はまさに圧倒的だ。本塁打数は村上より10本少ないが、50年代のパ・リーグはやはり今以上に投高打低だったことを考慮する必要がある。事実、中西は高卒2年目から何と4年連続で本塁打王を獲得。さらに首位打者1回、打点王には2回輝き、打撃三冠タイトル計7回は村上のほぼ倍だ。また、OPSも同じく2年目から4年連続リーグトップで、「傑出度」という点では、村上を凌駕していると言っていい。

 付け加えると、中西はこの期間に3度も三冠王のチャンスがあった。2年目の53年は、本塁打&打点の二冠に加えて打率.314は4厘差の2位。首位打者と本塁打王を手中に収めた55年は、今度は98打点が1点差の2位。56年に至っては、打率.325はわずか5毛差で及ばず。少しでもめぐり合わせが違っていれば、23歳までに3度三冠王に輝いていてもおかしくなかった。村上が今季三冠王になったとしても、まだ中西に一歩譲ると言わざるを得ないだろう。

 結論としては、高卒5年目までの村上は松井や王を上回っているが、中西にはわずかに劣る、ということになる。

 そうだとしても、“村神様”がセ・リーグでは間違いなく史上最強、プロ野球史上でも屈指の打棒を発揮していることは紛れもない事実。ヤクルトファンでもあってもそうでなくても、プロ野球史に残る素晴らしい打者の活躍を楽しむことができる幸福をいま一度嚙みしめようではないか。

構成●SLUGGER編集部
 
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