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プロ野球

世代随一のポテンシャルに加え、精神力と思考力を備えたドラフト候補・山田陽翔の軌跡<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.10.19

 チームに合流して間もない山田が早々にメンバー入りしたのは、練習試合で誰もが納得できる結果を残したからだった。「6月に彼が投げているのを見て、相当練習をやってきたと思いましたね」とは、多賀監督の弁。全体練習ができない中でも、即戦力として活躍できるだけの準備ができていたのだった。当時の取り組みについて山田はこう語っている。

「5月の自粛期間に、自主練習を少しハードにやっていました。下半身強化に力を入れて取り組んでいたので、それが大会で出てくれたのかなと思います」

 類まれなる才能を持ちながら驕ることなく、ストイックに努力を続けられるのも山田の長所だ。甲子園では打者としても結果を残したが、全体練習は投手のメニューが中心。始発で登校して早朝に打撃練習を行い、足りない分を補っていた。自主練習する習慣があるため、プロでも研鑽を怠ることはないだろう。

 また、輝かしい実績の裏で、山田は試練を乗り越えてきた経験も持つ。特に大きな壁が、2年夏の甲子園の後に発覚した右ヒジの疲労骨折だ。実は夏の県大会の時点ですでに違和感があったが、自らのリリーフ失敗で3回戦敗退に終わった春の県大会のけじめをつけるために「この大会だけは投げ切ろう」と心に決めていた。
 
 監督にもヒジの痛みを隠して投げ続け、夏の甲子園4強入りに大きく貢献。だが、その代償は大きく、秋の大会では投げることができなかった。だが、山田はこの怪我を「プロを目指す自分にとってはかなりいい経験になると思う」と前向きに捉え、成長のきっかけにした。投球を再開した後は投球フォームを修正し、ストレートの質が大きく向上した。

 最上級生になると、完投や連投を視野に投球術を磨くようになる。「1試合投げ抜いた後でも力を残っているような投球術があれば、絶対に優勝が見えてくると思う」と語った通り、センバツでは状況に応じてギアを入れ替えるクレバーな投球を披露。準々決勝の翌日には「3試合完投したとは思えないくらいに良いコンディションだと思います」と手応えを感じていた。

 中学時代から世代トップクラスの活躍を見せていた肉体的なポテンシャルに加えて、試練を乗り越える精神力と、クレバーな思考力も備えた山田の今後の行く末に注目したい。

取材・文●馬場遼
 

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