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MLB

アストロズとフィリーズのポストシーズン対決は史上2度目。伝説の名勝負となった42年前の激闘を振り返る<SLUGGER>

出野哲也

2022.10.26

 9回裏、アストロズもテリー・プールのタイムリーで同点とし3試合連続の延長戦となった。10回表にフィリーズは代打のルジンスキーがレフトへ二塁打。一塁走者のローズが激走し、捕手のブルース・ボーチー(来季からレンジャーズ監督)を左ヒジで突き飛ばして勝ち越しのホームを踏む。その裏は4連投のマグローが抑えて2勝2敗のタイとした。

 最終第5戦はライアンと、9月にメジャーへ昇格したばかりの22歳マーティ・バイストロムという対照的な先発投手が互角に投げ合い、7回表まで2-2。その裏アストロズはウォーリングのタイムリーで勝ち越すと、暴投で4点目、ハウの三塁打でさらに1点。アストロドームは興奮の坩堝と化した。

 だが8回表、2本の内野安打を含む3連打で満塁とされ、ローズに押し出し四球を与えた時点でライアンは降板する。フィリーズは内野ゴロでさらに1点を加え、代打の切り札デル・アンサーのタイムリーで同点。続くトリーヨの三塁打で一気に2点をリードした。しかしアストロズもその裏、ついに5連投となったマグローから、ランデストイとクルーズの連続タイムリーで振り出しへ引き戻す。9回は両軍とも無得点で、とうとう4試合連続の延長戦となった。
 10回表、フィリーズは一死からアンサーが二塁打。外野フライで三塁へ進むと、ギャリー・マドックスが放ったセンターへのライナーを、中堅手のプールが必死に追いかけたがわずかに届かなかった。その裏は、シーズン17勝の先発要員ディック・ルースベンがアストロズを三者凡退に抑え、8-7で勝利。29年ぶりとなるリーグ優勝を飾ったフィリーズは、ワールドシリーズでロイヤルズを倒し、球団創設98年目にして初の世界一を成し遂げた。

 第5戦は、2010年にMLBネットワークが選出した「史上最高の名勝負20試合」で18位にランクされている。当時アストロズの内野手だったイノス・カベルは、80年のLCSについて「ヒューストンからカリフォルニアの自宅へ戻る途中、ガソリンスタンドに立ち寄ると、どこでも必ず『凄い戦いでしたね』と言われた」と語っていた。文字通り全米の注目を集めた42年前の熱闘。今年のワールドシリーズでも、同じくらい熱いシリーズになることを期待したい。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
 
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