専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

待望の主砲・吉田がサヨナラ弾、2戦目に被弾の阿部がリベンジ――投打がかみ合って星を五分に戻したオリックス<SLUGGER>

氏原英明

2022.10.28

 9回裏、ヤクルトがクローザーのマクガフを投入すると、オリックスベンチが動く。

 先頭の若月に代えて、代打に安達了一を送ると、四球で出塁。1番の福田周平が犠打を決めて1死二塁として、2番・西野真弘の打球は投手強襲の内野安打。ボールを弾いた投手のマクガフが一塁へ悪送球する間に同点となった。

 3番の中川圭太は空振り三振。チャンスは潰えたかに見えたが、二死・一塁から吉田がライトスタンドの5階席に打ち込む豪快な一発を打ち込んだのである。

 打った瞬間にベンチへポーズを見せた吉田はダイヤモンドを一周回って、ヘルメットを投げ捨て、飛ぶように生還。いつもクールな吉田の飛び上がり具合に、この試合での勝利の大きさを物語っていた。

 やはり、吉田にとって、このホームランの意義は大きかった。

 冷静になって「感無量」の意味をこう説明している。

「こういう短期決戦で、(ホームランが)欲しい場面で打てるっていうのはやっぱり嬉しいです。これまで打球がなかなか上がらなかった。(バッテリーの)攻めも厳しいところにこられて、自分のスウィングができていなかった。ただ相手より自分自身が甘い球をしっかり仕留めていく。そういうのを心がけて、今日は2本とも甘かった。その中で1スウィングで仕留められたのは良かった」

 これで星をタイに戻した。

 再びフラットになったわけだが、最初のスタートから考えると、上り調子になっているのは間違いない。打線が湿ったままでなんとか1勝を掴んだのが第4戦だった。その流れの中で、今度は打線が奮起して五分に戻したのである。

 もっとも、吉田だけがこの日、輝きを取り戻したわけではない。
 
 6回途中から登板した阿部は、2戦目に同点本塁打を浴びた悪夢を払拭。ピンチを作ったりしたが、持ち味を発揮した。

 阿部は2戦目からの日々をこう語っている。

「ホームランを打たれた日は悔しくてなかなか眠れなかった。それでも監督やコーチからは気にするな、下向くなと。チームメイトからも、ここまでこれたんは阿部ちゃんのおかげやから気にするなと声をかけてもらったんで、2度はやられたくないという気持ちでした。今日はいつからでもいける準備はしていました」

 8回は初戦にホームランを浴びた平野佳寿が3人で斬り、9回は前日に引き続いて、ワゲスパックがピシャリと抑えた。

 ここへきて、ようやく投打とも噛み合ってきた。

 吉田は最後にこう意気込んだ。

「みんな勝つために一生懸命やってますし、負けていた時も切り替えながらやっていました。タイに持ち込めたので、チャンスをつかめるところまで来ていると思うので、あと2勝ありますけど、一戦必勝で戦っていきたい」

 主砲の復調が全てを吹き飛ばした。
 
 最高の状態で神宮へ乗り込む。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号