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プロ野球

強みのピッチングスタッフでようやく挙げた1勝。オリックスはシリーズの流れを変えられるか<SLUGGER>

氏原英明

2022.10.27

決勝打の杉本ともに、リードを守り切った投手陣から宇田川(左)と山崎颯(右)がお立ち台に。彼らの好投で流れは変わったか。写真:鈴木颯太朗

決勝打の杉本ともに、リードを守り切った投手陣から宇田川(左)と山崎颯(右)がお立ち台に。彼らの好投で流れは変わったか。写真:鈴木颯太朗

 ヒット数は相手を下回る3安打のみ。
  
それでも、杉本裕太郎の適時打で奪った虎の子の1点を守り切り、オリックスがシリーズの初勝利を挙げた。

 薄氷の勝利にオリックス・中嶋聡監督は言葉に力を込めた。

「本当に苦しいですよね。連敗と言いますか、一つも勝っていない中でしたからね。お互い、走者は出すんですけど、得点が入らないという展開で本当に苦しい。それでも(投手陣は)よく投げてくれたと思います」。

 4戦を戦って1勝2敗1分けとまだ負け越しているが、シリーズという短期決戦の中で1勝が流れを変える時もある。日本シリーズは10試合に満たない中で戦われる短期決戦だが、短いように見えて長い。たった1勝が流れを変える時もあるのだ。

 つまり、今回の1勝が、流れを変えうるものであったかは非常に重要である。

「初戦に先発した(山本)由伸で出鼻をくじかれてしまった。ヤクルトは(シーズン)170発くらい打っている、本当に驚異的な打線。今日は1-0ギリギリの所で得点圏に何度も進んでいた。首の皮1枚みたいな勝負でしたけど、まず一つ取れて、よかったというのはあります」
 
 そう振り返ったのは、再三再四ワンバウンドの変化球を止めて完封劇をアシストした捕手の若月健矢だ。

 若月の言葉にあるように、この日の勝利の価値はシーズン170発のヤクルト打線を止められたことだ。完封勝利はことのほか大きい。

 そもそも、今年のオリックスのストロング・ポイントはエース・山本由伸を中心としたピッチングスタッフの充実度だった。7戦の先発投手がスラスラ出てくるし、強力なリリーバーたちはほとんどが150キロ超えだ。

 しかし、シリーズが開幕して、なかなか得点を挙げられない打線と神宮球場のマウンドに苦しんだ投手陣はうまく噛み合っていなかった。そうしているうちに、ヤクルト打線に勢いが生まれ、なす術がなくこの3戦までは後塵を拝していたのだった。

 この日は山岡泰輔が先発。不安定なところもあったが、4回までは要所を締めて4安打無失点。5回表は1死をとったものの、1番・塩見泰隆に三塁打を浴びたところで降板した。

 中嶋監督が「1点勝負」とみて、この三塁走者を生還させないために、三振が取れる投手の起用を選択した。これはピッチングスタッフに自信がないとできない思いきった采配だ。

 そして、ここでマウンドに上がった宇田川優希は大仕事をやってのける。山﨑晃大朗、山田哲人を連続三振に切って取ったのだ。宇田川は155キロを優に超えるストレートとスプリットで勝負。全てのワンバウンドを若月が体で受け止め、最大のピンチを脱したのだった。
 
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