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MLB

“下克上”でワールドシリーズに進出したフィリーズとエンジェルスの「決定的で絶望的な差」<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.11.03

 だが、まったくの新規球団でもない限り、編成トップは前任者から引き継いだ長期契約の選手や、ドラフトでの指名順位などの縛りで、長期的な視野に立ってチームを再建することができない場合がある。それゆえにフィリーズは、短・中期的な視野から、他球団の主力選手をFAでかき集める構築法を主としたわけで、09年以来のリーグ優勝を果たしたことで、見事にその「即効性」が実証されたことになる。

 エンジェルスが今からアストロズ流のチーム構築法を目指すなら、前出の高額年俸3選手を何人か(もしくは一挙に)放出して、他球団の有望株をごっそりいただくしか道がない。なぜなら、エンジェルスのファーム組織は現在球界ワーストクラス(MLB公式のランキングでは全30球団中最下位)であり、アマチュア選手の獲得も育成もあまり機能していないからだ。

 ファーム組織ランキングは、マイナー選手や新規獲得したアマチュア選手のスカウティング・リポートによる主観的なものだが、「Prospect=有望株」の質が高く、その数が多いほど順位は上がる。開幕時に28位だったエンジェルスがドラフト会議を経た上、シンダーガードやブランドン・マーシュ外野手を放出し、有望株を何人か獲得した後でもランキングが後退してしまったのは、残念でならない。

 今年のプレーオフ出場チームの中には、トレードを多数成立させてチームの競争力を上げたマリナーズやパドレス、ガーディアンズのようなチームも存在するが、いずれも自前の選手育成にも成功している。そもそも、有効なトレードを成立させるためには、相手にとっても魅力的な交換要員=「有望株」が必要だからだ。
 実はフィリーズは同じファーム組織ランキングで25位、アストロズも29位と低迷しているのだが、それは彼らがマイナー有望株を「主力選手に育成」したか、「プレーオフ出場のためにトレードの交換要員」にしたためでもある。

 たとえば、開幕前のファーム組織ランキング2位につけていたマリナーズは、新人王最有力候補フリオ・ロドリゲスや、肩ヒジ保護のためイニング制限を設けられながら8勝を挙げた先発ジョージ・カービーなどが揃ってMLBで活躍したため、現在は14位まで落ちた。

 フィリーズも、数年前にリアルミュートを獲得する際に3人のプロスペクトを放出し、二塁手のジーン・セグーラを得た3対2のトレードには、のちにマリナーズの正遊撃手となるJP・クロフォードが含まれていた。
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