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MLB

大谷翔平が言った「ヒリヒリする戦い」の向こう側にある特別な時間――ファンが「熱狂」を作り出すMLBのプレーオフ<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.10.19

熱狂的な地元ファンの声援を受けたフィリーズは、大番狂わせでブレーブスを下した。(C)Getty Images

熱狂的な地元ファンの声援を受けたフィリーズは、大番狂わせでブレーブスを下した。(C)Getty Images

 大谷翔平(エンジェルス)がかつて言った、「ヒリヒリする9月」。地区優勝やプレーオフ進出を懸けた息詰まる戦いは、もうすでに終わった。

 今、我々が目にしているのは「ヒリヒリ」の向こう側にある特別な時間の連続であり、「ヒリヒリ」を遥かに超越した「瞬間」だろう。

 10月14日のフィラデルフィア。フィリーズ対ブレーブスのナ・リーグ地区シリーズ第3戦。三回、フィリーズが9番ブライアン・ストットの適時二塁打で先制点を挙げ、1番カイル・シュワーバーが敬遠された直後、2番のリース・ホスキンス一塁手はそんな「瞬間」が訪れるのを実感したという。

 屈辱の「シュワーバー敬遠=プレーオフ打率0割台の自分と勝負」。

 熱狂的なゆえに時には辛辣でもあるフィリーファンやメディアから、守備の乱れやプレーオフの打撃不振を批判されていたホスキンスはしかし、ブレーブスの先発スペンサー・ストライダーの初球を迷わず叩き、レフトへ豪快な3ラン本塁打を放った。
 球場が揺れた。耳が痛くなるほどの大歓声が、取材席に飛び込んできた。天井からぶら下がったテレビモニターに、打った瞬間、一塁側の自軍ベンチに振り向き、バットを叩きつけるように投げ捨て、雄叫びを上げるホスキンスの姿が映し出された。

 漫画的に解釈すれば、「ナメてんじゃねーぞ!」、あるいは「見たか、オラァ!」と言ったところだろうか。

「その『瞬間』ってのは、ずっと長い間、聞いてきた。2017年にデビューして以来、長くこの世界にいる連中から話を聞いたり、写真なんかを見たりしてね。正直に言うと、自分があの時したことを理解できたのは数イニングだったんだ。自然に出てきたことだったけど、楽しかったなぁ」

 ホスキンスがそう言ったのは、試合後の共同会見でのことだ。隣に列席していたブライス・ハーパー外野手が、「うん、うん」と頷く。ハーパーはその「瞬間」について尋ねられると、「リースがバットを投げたのと同時に、僕もバットとヘルメットを投げ捨てちまったんだ」と笑った。ちなみにハーパーも同じイニングに右翼席に2点本塁打を放っている。

「本当に興奮している。こういうチャンスがあること……毎日、自分の周りにいる人々や街、球団のために、ここ(プレーオフ)でプレーしているって意味を理解したからね」
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