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MLB

“下克上”でワールドシリーズに進出したフィリーズとエンジェルスの「決定的で絶望的な差」<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.11.03

 映画『マネーボール』では、トレードはあたかも「取引相手を欺いて自分たちが優位に立つための商談」のように描かれているが、本来は両チームに利益が生じるものである。マーリンズは19年、リアルミュートの交換要員として獲得した若手豪腕投手シクスト・サンチェスの活躍もあって17年ぶりのプレーオフ進出を果たしたし、クロフォードが正遊撃手として定着したマリナーズも今年、実に01年以来21年ぶりにプレーオフの舞台に立った。

 ファルドGMは現役時代、派手なダイビング・キャッチで名を馳せた「守備職人」だった。データ活用の最先端を行くレイズでプレーしたこともあり、現役時代から「フィールド上のパフォーマンスやその準備など、すべての領域における情報を統合、活用すること」を学んだと言われている。引退後はレッドソックスやカブスの監督候補になるなど、「広い視野でチームを見ることができる」と評価されていた。今夏はフィリーズの弱点だった「守備」の強化を念頭に、あらゆるリソースを駆使して得た情報を分析し、正しく理解した上で、エンジェルスからマーシュを途中補強した。リーグ優勝した際、ファルドGMはこう語っている。
「ワールドシリーズまでたどり着くまでには、いろんな方法があると思います。このチームが守備ではなく、長打力を武器にしているのは、皆さんが知ってる通りです。だからこそ、彼(マーシュ)の獲得は、今の成功の後押しとなったのです」

 エンジェルスも、「あらゆるリソースを駆使して得た情報を分析、及び理解して、選手の獲得や育成に活用」はしているのだろうけれど、現状はその質が低いと言わざるを得ない。新オーナーが誰であれ、エンジェルスは今後も、3人の「3000万ドルプレーヤー」と「その他大勢」のバランスを見定めるだけのチームを構築するのだろうか。

 これはエンジェルスの選手にとってもとても不幸で、絶望的な状況だ。プレーオフを目指すなら、「大谷放出」はもはや自明の理なのだが、果たして――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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