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MLB

吉田正尚はあえて単年契約を選ぶべき? ポスティングでMLB移籍をする日本人選手に伝えたい「成功への道」<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.11.24

 両選手の取材を通じて実感したのは、日本プロ野球からMLBに移籍した野手にとって、「交渉する球団の選択(戦力と出場機会)」と、「結果を残せる環境を維持し続けること」がとても大事だということだった。「出場機会=チャンスは自分でつかみ取るもの」と至極真っ当なことを思う人もいるだろうが、これにはいささかトリッキーな側面もある。

 たとえば、秋山の場合はパンデミックで公式戦が60試合に大幅縮小されたシーズン前半の30試合は打率2割前後に沈んだものの、後半30試合は3割以上を打って「通用」していたのだ。たった30試合では判断できない、と言われればそれまでだが、その成績があっての「1番・レフト」定着であり、ゴールドグラブ賞最終候補選出だったのは間違いない。

 ところが、翌年のキャンプで、本人の怪我+マイナー契約のタイラー・ネイクインの意外な活躍のおかげで、構想から外れてしまった。3安打した翌日にベンチを温めるなど、「長打偏重」に方向転換したチームのなかで、「デビュー年に定位置を獲得した打撃では十分んではない」と判断されたわけだ。秋山の怪我もネイクインの台頭も「想定外」ではあったが、そういうことはMLBではいつでも起こり得る。

 だから、ポスティングによるMLB移籍を目指すのなら、長期契約ではなく、短期契約の方がいい。結論から先に書くと、長くても2年、可能であれば単年契約で2年目は相互オプション、もしくは選手側のオプトアウト(契約終了によるFA権取得)を付随させる形がベストだろう。
 
「ポスティングで余分な譲渡金が発生するのに、MLBの各球団が単年契約なんてするわけがないだろう?」と思う人もいるかもしれないが、現行のポスティング制度は最高入札額を提示した球団のみが交渉できるかつての歪なルールから、獲得意志のある球団ならどこでも入団交渉ができるルールに変わった。一昔前のようにメジャー球団側から「この条件が嫌なら日本へお帰り下さい」という無言のプレッシャーがないのだから、選手や代理人にとっては限りなくFAに近い。

 だから、条件は多少悪くても、1年もしくは2年の短期契約を結び、契約最終年にしっかり成績を残して「真のFA」となり、成績に見合った契約を勝ち取る可能性を残した方がいい(もちろん、契約満了時にFAになる付加条項を忘れずに付けておく)。それなら周囲の予想以上の成績を残したのに安い給料で何年も働かされることはないし、成績が残らず、「飼い殺し」同然の状態になることもない。

 それでもまだMLBでやりたいのなら、(ポスティング移籍ではなかったが)パイレーツから自由契約になってブルージェイズとマイナー契約した筒香選手のように、他球団のマイナーからやり直すことができる。何らかの理由で「MLBはもう十分」と判断したら、1年も無駄にすることなく、日本球界への復帰が可能になるわけだ。
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