高校時代はやや“ヤンチャ”な選手としても評判だったが、これは日本ハム特有の、角度を変えて人を見抜くスカウティングにより見出した、西川の特筆した才能だった。
大渕隆スカウト部長は西川をこう評している。
「評判というのは、例えば悪いものだったとしても、それは選手としての特徴なんですよね。でも、そういったものって、『人としてのパワーになる』と個人的には思っていて、遥輝の場合は、それが爆発力にもなる。僕には『伸びしろ』に感じました」
西川のプレーを見ていても、確かに爆発力を感じる。先の高嶋氏のコメントにも表れているが、2016年の日本シリーズでは、第3戦に土壇場での盗塁成功、第5戦はサヨナラ満塁本塁打とド派手な活躍を見せている。大舞台で強いという“爆発力”は、ステージのレベルが上がれば上がるほど、そこに適応できることの裏返しであろう。
では、実際、彼のポテンシャルはメジャーで通用するほどのものなのだろうか。
今季終了時点までの9年間の通算成績は打率.284 、46本塁打、245盗塁(成功率86.6%)、出塁率.376、OPS.769。このオフ、海外FA権を行使してのメジャー移籍を目指している秋山翔吾(西武)が比較対象になるだろうが、際立つのは、出塁率と盗塁数である。
西川の出塁率が高い理由は、状況判断の的確さだ。
自身のバッティングに自信を持っているものの、その状況により、考えを変化させていく。「打つべきか」「四球を狙うべきか」の割り切りを打席の中で、さまざまに対応していくことができる。
ある時、同学年を代表する千賀滉大(ソフトバンク)の対策について、こう語っていた。
「千賀投手はストレートが速くて、フォークもいい。普通に打ちにいくには難しい投手です。でも、コントロールはいい方ですけど、ずば抜けているわけではない。四球が取れないわけではない。シーズンのどの状況で対戦するかによりますけど、今日の試合はどうしても先制点が欲しいという状況なら、僕は四球を狙いに行きます」
ただ、彼がもっとも自信を持っているのは盗塁だ。常に「9割の確率で盗塁を決められる」ほどの手応えを持っていて、臆することなくスタートが切れる。もちろん、状況判断も的確にできるが、その精神的な強さは彼の持つ武器だろう。それこそ大渕が言う「爆発力」を出せる分野なのだ。
3月に見た表情から、彼のメジャーへの想いを読むことはできなかったが、今になって思うと「興味」ではない、大きなものが彼の中にはあったと想像する。記者の前で口にしたというのだから、相当に本気なのだ。
西川の足がメジャーリーグを席巻するかもしれない。そう考えるだけでもゾクゾクする。
もちろん、メジャーで成功するためには、たくさんの障壁があるのは事実だ。しかし、西川にとっての評価が最初は「足」だけであったとしても、光り輝く何かを見せてくれるのではないかという期待が湧くプレーヤーなのは、間違いない。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
大渕隆スカウト部長は西川をこう評している。
「評判というのは、例えば悪いものだったとしても、それは選手としての特徴なんですよね。でも、そういったものって、『人としてのパワーになる』と個人的には思っていて、遥輝の場合は、それが爆発力にもなる。僕には『伸びしろ』に感じました」
西川のプレーを見ていても、確かに爆発力を感じる。先の高嶋氏のコメントにも表れているが、2016年の日本シリーズでは、第3戦に土壇場での盗塁成功、第5戦はサヨナラ満塁本塁打とド派手な活躍を見せている。大舞台で強いという“爆発力”は、ステージのレベルが上がれば上がるほど、そこに適応できることの裏返しであろう。
では、実際、彼のポテンシャルはメジャーで通用するほどのものなのだろうか。
今季終了時点までの9年間の通算成績は打率.284 、46本塁打、245盗塁(成功率86.6%)、出塁率.376、OPS.769。このオフ、海外FA権を行使してのメジャー移籍を目指している秋山翔吾(西武)が比較対象になるだろうが、際立つのは、出塁率と盗塁数である。
西川の出塁率が高い理由は、状況判断の的確さだ。
自身のバッティングに自信を持っているものの、その状況により、考えを変化させていく。「打つべきか」「四球を狙うべきか」の割り切りを打席の中で、さまざまに対応していくことができる。
ある時、同学年を代表する千賀滉大(ソフトバンク)の対策について、こう語っていた。
「千賀投手はストレートが速くて、フォークもいい。普通に打ちにいくには難しい投手です。でも、コントロールはいい方ですけど、ずば抜けているわけではない。四球が取れないわけではない。シーズンのどの状況で対戦するかによりますけど、今日の試合はどうしても先制点が欲しいという状況なら、僕は四球を狙いに行きます」
ただ、彼がもっとも自信を持っているのは盗塁だ。常に「9割の確率で盗塁を決められる」ほどの手応えを持っていて、臆することなくスタートが切れる。もちろん、状況判断も的確にできるが、その精神的な強さは彼の持つ武器だろう。それこそ大渕が言う「爆発力」を出せる分野なのだ。
3月に見た表情から、彼のメジャーへの想いを読むことはできなかったが、今になって思うと「興味」ではない、大きなものが彼の中にはあったと想像する。記者の前で口にしたというのだから、相当に本気なのだ。
西川の足がメジャーリーグを席巻するかもしれない。そう考えるだけでもゾクゾクする。
もちろん、メジャーで成功するためには、たくさんの障壁があるのは事実だ。しかし、西川にとっての評価が最初は「足」だけであったとしても、光り輝く何かを見せてくれるのではないかという期待が湧くプレーヤーなのは、間違いない。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。