大谷が高校時代に書いたという“マンダラチャート”と呼ばれる目標設定シートはすっかり有名になった。だが、それを見ても野球の技術について書かれているのは全てピッチングに関するものである。その事実からも、当の大谷本人もあくまでピッチャーとしてプロで勝負すると考えていたのは間違いないだろう。
そして、高校1年時に感じた大谷の印象は最終学年になっても大きく変わることはなかった。
3年春に出場した選抜高校野球では優勝した大阪桐蔭と初戦で対戦し、第1打席で先制のソロホームランを放ち、投げても11個の三振を奪った。だが、自身が11四死球を与えた影響は大きく、最終的には2対9で大敗している。
前年の夏に比べてフォームは別人のように下半身を使えるようになっていたのは確かだ。しかし、力を入れて投げると、途端に制球力を失う姿が印象に残っている。投げ合った藤浪晋太郎と比べても完成度は明らかに低かった。また打撃もパワーや飛距離よりも柔らかいスイングで上手さが目立つバッターというイメージだった。
ただ、そんな大谷の高校時代を改めて振り返ってみて、打者としてのポテンシャルの大きさを感じた試合があったことも事実だ。
それは2年秋に出場した東北大会の日大山形戦。この時の大谷はまだ股関節の故障が治っておらず、背番号11をつけてベンチスタートとなっていたのだが、出番が訪れたのは2点を追う8回だった。
1死二塁の場面で代打として出場も結果はレフトフライだったものの、技巧派サウスポーの外角の緩い変化球に対して完全に泳ぐようなスイングになりながらも打球はフェンスの手前まで届いていた。いくら金属バットでも、緩い変化球に、合わせたようなスイングでここまで飛ばせる高校生はそういるものではない。メジャーでも逆方向へホームランを打つ度にこの時の打球が思い出される。
そして余談だが、個人的にアマチュア時代の大谷について深く後悔していることもある。それは3年夏の岩手大会に足を運ばなかった自分の判断だ。無論、準決勝で高校野球史上初めて160キロをマークした様子は映像では見ていたが、決勝までは約1週間の登板間隔があったことで、甲子園に出られるだろうと決めつけてしまった。この時の反省もあって、その年の目玉となる選手の最終シーズンは極力現地で見るようになった。
ただ仮に最後の夏の大谷の投球を見ていたとしても、メジャーでここまでの活躍を予想できた人はおそらく誰もおらず、大谷自身も二刀流での活躍は想像していなかったのではないだろうか。
もちろんすべては自分の可能性に蓋をすることなく、投打の両面でたゆまぬレベルアップを図ってきた結果と言えるだろう。2023年もメジャーリーグ、そしてWBCでも世界を熱狂させる活躍を見せてくれることを期待したい。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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3年春に出場した選抜高校野球では優勝した大阪桐蔭と初戦で対戦し、第1打席で先制のソロホームランを放ち、投げても11個の三振を奪った。だが、自身が11四死球を与えた影響は大きく、最終的には2対9で大敗している。
前年の夏に比べてフォームは別人のように下半身を使えるようになっていたのは確かだ。しかし、力を入れて投げると、途端に制球力を失う姿が印象に残っている。投げ合った藤浪晋太郎と比べても完成度は明らかに低かった。また打撃もパワーや飛距離よりも柔らかいスイングで上手さが目立つバッターというイメージだった。
ただ、そんな大谷の高校時代を改めて振り返ってみて、打者としてのポテンシャルの大きさを感じた試合があったことも事実だ。
それは2年秋に出場した東北大会の日大山形戦。この時の大谷はまだ股関節の故障が治っておらず、背番号11をつけてベンチスタートとなっていたのだが、出番が訪れたのは2点を追う8回だった。
1死二塁の場面で代打として出場も結果はレフトフライだったものの、技巧派サウスポーの外角の緩い変化球に対して完全に泳ぐようなスイングになりながらも打球はフェンスの手前まで届いていた。いくら金属バットでも、緩い変化球に、合わせたようなスイングでここまで飛ばせる高校生はそういるものではない。メジャーでも逆方向へホームランを打つ度にこの時の打球が思い出される。
そして余談だが、個人的にアマチュア時代の大谷について深く後悔していることもある。それは3年夏の岩手大会に足を運ばなかった自分の判断だ。無論、準決勝で高校野球史上初めて160キロをマークした様子は映像では見ていたが、決勝までは約1週間の登板間隔があったことで、甲子園に出られるだろうと決めつけてしまった。この時の反省もあって、その年の目玉となる選手の最終シーズンは極力現地で見るようになった。
ただ仮に最後の夏の大谷の投球を見ていたとしても、メジャーでここまでの活躍を予想できた人はおそらく誰もおらず、大谷自身も二刀流での活躍は想像していなかったのではないだろうか。
もちろんすべては自分の可能性に蓋をすることなく、投打の両面でたゆまぬレベルアップを図ってきた結果と言えるだろう。2023年もメジャーリーグ、そしてWBCでも世界を熱狂させる活躍を見せてくれることを期待したい。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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