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「昔はゲンコツ1発で――」大阪桐蔭・西谷浩一監督も漏らす指導の変化。暴力が絶えない高校球界はどう変わるべきなのか

氏原英明

2023.02.11

全国制覇を幾度も成し遂げている大阪桐蔭は選手の個性を伸ばす手法を取っている。しかしながら、現在の高校野球界で彼らのような指導を行なえるのは限られた学校だけである。(C)THE DIGEST

全国制覇を幾度も成し遂げている大阪桐蔭は選手の個性を伸ばす手法を取っている。しかしながら、現在の高校野球界で彼らのような指導を行なえるのは限られた学校だけである。(C)THE DIGEST

 とはいえ、日本高野連がスケジューリングに何の問題も感じていない現状で、大きな変化は見込めない。

 毎年のように高校野球は同じような過密日程で進んでいく。だからこそ、指導者はいち早く、子どもの体質や時代の変化に気づき、古い体質から抜け出す必要があるのだ。

 西谷監督は「時間がかかることですけど、でも、指導者が言い聞かせられない時代だということは、今度は理解して、選手が自分で律していく力が昔より求められてくるとは思います」とも語る。

 言い方は悪いが、野球バカを殴って言い聞かしてきた時代はあった。しかし、それがなくなった今は単なる「野球バカ」に成長の余地はないと言うことだ。西谷監督が率いる大阪桐蔭は、「自分を律する」ための環境を長く作り上げてきたチームである。
 
 個性を育み、チームとしての力をつける――。大阪桐蔭は過去に稀代のスラッガーを擁したがゆえに、甲子園出場を逃す年もあった。その背景には育成と勝利を同時に果たす難しさと、勝利を犠牲にしたチーム作りがあった。もちろん「負けてもいい」「勝てない期間があって当然」などと思ってやってきたわけではないが、彼らには勝利と育成に明確な線引きがあり、歴史を重ねていくなかで、今のようなチームが出来上がったのである。

 春夏連覇をやってのけた藤浪晋太郎(オークランド・アスレティックス)や森友哉(オリックス)のほか、中田翔(巨人)、中村剛也(西武)ら多くの名手をプロ野球界に送り出したのは、いずれも時代の変化に対応してきたからにほかならない。

 西谷監督は、こうも語っている。

「個を鍛える時期とチームを鍛える時期は違うと思っています。けど、チームとしてどのように戦っていくのかという風土は選手たちの中に少しずつ付いてきているかなとは思っています。選手が揃わないとか、個が育っていない状況でも野球は勝っていかないといけない。昔、(ライバルの)PL学園が今年はそこまで強くないと思ったチームでも勝てなかった。そういう部分は少しずつの伝統として育まれているのかもしれないです」
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