とはいえ、これは高校野球における成功例だ。大阪桐蔭のような強化スタイルを、全国のあらゆるチームが真似できるかというとそうではないかもしれない。
大阪桐蔭とはまるで異なる方法で、選手を自立させてきたチームとして挙げられるのが、今春のセンバツに12年ぶりに出場する東北高校である。
昨秋の県大会を12年ぶりに制覇し、東北大会でも準優勝を果たした名門にあって、昨年8月に就任したばかりの佐藤洋監督が新たな風を吹き込んでいる。
元ジャイアンツの内野手でもあった佐藤監督の指導スタイルは極めて自由だ。
練習メニューや時間、試合での作戦などの多くを選手が決定するもので「考える自由」を与えている。その指導法を確立させたのは、佐藤監督の「野球を子ども達に返す」という信念があるからにほかならない
佐藤監督は言う。
「自分が子どものときはどうだったかなって考えると、僕は(小学校の時)チームに入っていなかったので、公園で野球やって、自分たちでルールを考えて遊んでいた。全部自分たちで決めて遊んでたときは楽しかったんですよね。
日本の野球は“早熟”なんですよ。いろんなことが早い。そのせいで子どもたちが無理強いをさせられている。勝利至上主義という言葉では軽いくらいの問題がある。そこを変えたかった」
練習では選手たちは好きな格好をしている。グラウンドには今流行りの音楽が流れ、雰囲気はいたって和やかだ。もちろん緊張感がないわけではなく、選手たちはそれぞれの「意思」を持って行動しているのが分かる。
自由であるのだけれども、それは「考える自由」の許容であり、選手側からすれば「責任のある自由」を求められていることでもある。
佐藤は急場しのぎをしない方針でチーム作りを進めているが、昨夏の就任からセンバツ出場であっという間の出来事だった。急いでいなくても成果が出るのだから、高校野球とは不思議なものである。
ここに新たなヒントがあるのかもしれない。佐藤監督はこんな話もしている。
「大会に行けば、優勝できるかもしれないし、できないかもしれない。それはどうなるかわからないことです。でも、僕が日本一、怒らない監督になることはできると思います。チームも、日本一、自立したチームになることはできると思っています」
野球のスタイルだけではなく、子どもの気質、世間の風潮など、時代は変わってきた。
20年以上前とは様々な事柄が変化しているなかで、どんな指導を大人たちはしていくべきなのか。今、高校野球の現場を預かる指導者にはそれが求められている。
過去の経験から今の時代に合わない指導を未だ繰り返すのか。それとも、変化に対応していくのか。もう答えは出ているはずだ。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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昨秋の県大会を12年ぶりに制覇し、東北大会でも準優勝を果たした名門にあって、昨年8月に就任したばかりの佐藤洋監督が新たな風を吹き込んでいる。
元ジャイアンツの内野手でもあった佐藤監督の指導スタイルは極めて自由だ。
練習メニューや時間、試合での作戦などの多くを選手が決定するもので「考える自由」を与えている。その指導法を確立させたのは、佐藤監督の「野球を子ども達に返す」という信念があるからにほかならない
佐藤監督は言う。
「自分が子どものときはどうだったかなって考えると、僕は(小学校の時)チームに入っていなかったので、公園で野球やって、自分たちでルールを考えて遊んでいた。全部自分たちで決めて遊んでたときは楽しかったんですよね。
日本の野球は“早熟”なんですよ。いろんなことが早い。そのせいで子どもたちが無理強いをさせられている。勝利至上主義という言葉では軽いくらいの問題がある。そこを変えたかった」
練習では選手たちは好きな格好をしている。グラウンドには今流行りの音楽が流れ、雰囲気はいたって和やかだ。もちろん緊張感がないわけではなく、選手たちはそれぞれの「意思」を持って行動しているのが分かる。
自由であるのだけれども、それは「考える自由」の許容であり、選手側からすれば「責任のある自由」を求められていることでもある。
佐藤は急場しのぎをしない方針でチーム作りを進めているが、昨夏の就任からセンバツ出場であっという間の出来事だった。急いでいなくても成果が出るのだから、高校野球とは不思議なものである。
ここに新たなヒントがあるのかもしれない。佐藤監督はこんな話もしている。
「大会に行けば、優勝できるかもしれないし、できないかもしれない。それはどうなるかわからないことです。でも、僕が日本一、怒らない監督になることはできると思います。チームも、日本一、自立したチームになることはできると思っています」
野球のスタイルだけではなく、子どもの気質、世間の風潮など、時代は変わってきた。
20年以上前とは様々な事柄が変化しているなかで、どんな指導を大人たちはしていくべきなのか。今、高校野球の現場を預かる指導者にはそれが求められている。
過去の経験から今の時代に合わない指導を未だ繰り返すのか。それとも、変化に対応していくのか。もう答えは出ているはずだ。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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