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侍ジャパン

松井裕樹は不調から抜け出せるのか? 世界一の瞬間にマウンドに立つ“真のクローザー”候補は誰だ【WBC】

出野哲也

2023.03.02

WBC球への適応に苦しむ松井。はたして本番までに調整できるだろうか。写真:梅月智史

WBC球への適応に苦しむ松井。はたして本番までに調整できるだろうか。写真:梅月智史

 ただし、東京五輪が開催されたのは8月だったため、レギュラーシーズンの真っただ中という理由でメジャーリーガーは参加していなかった。決勝で対戦したアメリカもマイナーリーガーと日本のプロ野球に所属する助っ人の混成軍であり、今回対戦する強豪国とはレベルが違う。

 つまり栗林もメジャーリーガー相手に抑えてはいなかったわけで、その点では松井のほうが経験値は高い。本来であれば松井を正クローザー、栗林を副クローザーとして本番に臨むのが最善だったはずだ。

 ところが、問題なのはその松井が現時点でまったく調子が上がっていない点だ。WBCの使用球への対処に苦労しているとのことで、2月14日に行なわれた日本ハムとの練習試合では0.2回で5安打6失点。

 この日は実戦初登板、しかも雨天という悪条件だから仕方ないとも思えたが、代表チームの一員として臨んだ26日のソフトバンク戦でも、1回を無失点に抑えはしたものの2四球を与えた。「変化球が入らずストライクがなかなか取れなかった。次回に向けてしっかり修正していきたい」と語っていたが、正直かなり不安を抱かせる状態である。

 ダルビッシュらのアドバイスなどを受けて修正に取り組んでいるけれども、同じ試合で150km台中盤を連発した大勢のほうを抑えに……と思いたくなる気持ちもわからないではない。
 
 一方、栗林は2点リードでの9回という、まさしくセーブ機会で登板して1イニングを無難に抑えた。あくまで現段階で判断するなら、抑えは栗林で行くしかないとの結論になる。実績や経験、現在の調子などあらゆる条件を考慮した上で、「この男を出して負けるのなら仕方ない」と思わせるクローザーは栗林だ。

 しかし、だからと言って五輪のように毎試合栗林を投げさせるわけにもいかない。WBCには球数制限が設けられていて、1試合で30球を超えてしまった場合は翌日の試合に投げられないからだ。例えば20日に予定されている準決勝で栗林が登板し、30球以上を費やしてしまったら、たとえ勝ったとしても翌21日の決勝では別の誰かを使わなければいけなくなる。

 こうした状況も想定されるので、やはりどうしても抑え役は二人用意しておきたい。今後、松井の調子が上がっていくのなら何も問題はなくなる。だが、そうならない場合に備えておく必要はある。東京プールの段階で、比較的与しやすい対戦相手に、若手の2人にクローザーとしての場数を踏ませておくことも考えねばならないだろう。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。

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