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侍ジャパン

“異変”の予兆があった2月25日の打撃練習――左腹斜筋痛でWBCを辞退した鈴木誠也の気になる復帰時期<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.03.02

 怪我してからの最初の「10日間」というのが大事なのかもしれない。

「やった時よりは少しずつ良くはなってきているが、まだ痛み自体はやっぱりあるので、まずはそこを取っていかないとなって感じです。なかなか治りづらい場所でもありますし、ぶり返すことがある箇所でもあるので、ここで焦って開幕に合わせて……もちろん、開幕に合えばベストなんですが、そこばかり目指して、焦って、またシーズン途中で離脱っていうのは絶対に嫌なんで、とにかくしっかり直したいなと思っています」

 侍ジャパン合流目前で出場辞退するという「悔しい気持ち」をシャットアウトして眠るため、アイマスクをしたそうだが、それでも「寝つきが悪い」と言うほど、気持ちをは沈んでいた。自身の出場辞退を大谷に連絡した時も、その心の傷は深いままだった。

「……あんまり考えられてなかったですね。イライラもしてましたし、大分、気持ち的には落ち着いてきましたけど、まだ時間があるんで、その間にちょっと整理したいなと思っています」

 ただ、すでに起こってしまったことを、いつまでも悔やんでいる暇はない。
 
「怪我するってことは何かしら原因があって怪我すると思うんで、こういった長い期間、野球ができなくなりますけど、その中でいろいろと考えることもありますし、今後、必要なことは何なのかっていうのは、自分がしっかり考えないといけないのかなと思うんで、原因をしっかり探って、いろいろ考えて次に活かしたいなと思っています」

 怪我の原因。それを、オフのトレーニングで10キロも増量したことに求める人もいるだろうが、鈴木はそれをきっぱり否定した。
 
「体重の増量自体は……元々、日本(にいた頃)の体重からそんなに変わってないんです。ただ、去年がちょっと落ちすぎてしまったってだけで、ほぼ戻した。プラス2、3kg増えただけなんで、そんなに変わらないとは思うんですけど、ちょっと気合い入りすぎましたね……分かんないですけど」

 こわばった表情が、ほんの少し、ほんの一瞬、緩んだような気がした。

「まあでも、実際にトレーニングして、こうやってなったからって後悔はないですし、自分の考えなりに課題を見つけてやってきた。状態的にはすごく良かったですし、ただプラス、もう少しなにか出来たんじゃないかっていうのはあるんで。そこはもう一回しっかり考えて、やりたいなと思っています」

 それが最初の「10日間」であろうが、次の「10日間」であろうが、彼がやるべきことは決まっている。

「痛みが出てしまう動きっていうのはダメって言われているので、まずは痛みを引かす、っていうことが絶対なんですけど、痛みが出ない範囲で可動域の訓練であったりとか、昨日からやり始めているんですけど、少しずつ、という感じだと思います」

 WBC出場は叶わなかったが、鈴木にはまだカブスでのシーズンがある。

 今はただ、彼の回復を待って、彼がいつの日か、日本の野球ファンが今まで見たこともないような、豪快極まりない打球をシカゴの空に放つのを待つだけである――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO

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