第1ラウンドでは韓国戦に先発し、4回2失点。第2ラウンドはキューバを相手に6回無失点、いずれも大事な試合での勝利だった。そして、準決勝ではついにアメリカと対戦。アメリカは20勝2度の好投手ロイ・オズワルトを先発に立ててきたが、松坂が投げ勝った。デレク・ジーターはじめスター選手が並んだ打線を、5回途中2失点にまとめ、侍ジャパンは9対4と完勝した。
韓国との決勝戦、延長10回にイチローのセンター前タイムリーで勝ち越し、ダルビッシュがマウンド上で仁王立ちした優勝決定シーンは、もう14年も前なのに多くのファンの記憶に鮮明に残っている。
松坂は2大会連続のMVPに選出されるとかなり驚いたような表情を見せ、「MVPは(大活躍だった)岩隈(久志)君だと思う」と話していたが、フィールド上でのインタビューを終えると、喜びを分かち合う仲間の輪に満面の笑顔で向かっていった。
日本代表、侍ジャパンを応援していた日本人の記憶は、おそらく、ここで一度区切られていると思う。
2009年シーズン後に判明したことだが、実は、松坂はWBC前の1月、トレーニング中に右足内転筋を痛めていた。のちに「走るのもしんどくて、あの頃は出場するか辞退するか、一人で悩んでいた」という。結局、無理を押してWBCに出場した松坂は、レギュラーシーズンでは故障者リストに2度入り、4勝6敗、防御率5.76と自己最悪の成績に終わった。故障を隠していたことで球団と揉め、メディアからは激しいバッシングに遭った。
そしてそれ以降、松坂が本来の姿に戻ることは二度となかった。
日本で通算114勝、MLBで56勝。計170勝のうち、実に141勝は第2回WBC前の10年間で挙げたものだ。第2回WBCの優勝とMVPは、松坂の野球人生を大きく変えてしまうほどの代償を伴ったのだ。 第3回WBC開幕を1ヵ月後に控えた17年2月、当時ソフトバンクに在籍していた松坂を生目の杜に訪ねた時、日本代表への思いを聞かせてくれた。故障を隠して第2回大会に出場したことを問うと、「日の丸を背負うって、すごいことじゃないですか。だから、任されたら、自分の状態がどうとか、そういうことじゃないと思うんです。任された試合、その日にベストの状態で臨む。その日にできることがベストだと思うんですよね。それぐらいの気持ちはありました」と話した。
そこで結果を出した代わりに、自身の野球人生が影響を受けた面も否めないはずだが、「みんながWBCに出づらくなっちゃったのは、僕のせいでもあるんですよ。僕が状態が良くないままWBCで投げて、それ以降悪かったじゃないですか。だから、WBCに出ることのリスクとかが言われて。そういう意味では責任も感じてるんですけどね」
さらに、松坂はこう続けた。「でも、今の僕が言っても笑われるかもしれないけど、東京オリンピックだって、日の丸を背負いたいですよ。不可能に見えても目指していきたい、それぐらい日本代表って価値があると思うんです」
今回の日本代表には、大谷翔平、ダルビッシュ有、村上宗隆、佐々木朗希、山本由伸とスター選手が一堂に集結。“史上最強”との呼び声も高く、それだけに優勝への期待も大きい。そんな中、今回の侍ジャパンの勝利と、出場選手の今後の活躍を人一倍強く願っているのは、おそらく松坂大輔だろう。彼は「日の丸の価値」を他の誰よりも知っている男だからだ。
文●節丸裕一
【著者プロフィール】
せつまるゆういち。フリーアナウンサー。早稲田大学を卒業後、サラリーマンを経てアナウンサーに転身。現在はJ SPORTSなどでプロ野球やMLB中継を担当。フジテレビONE『プロ野球ニュース』にも出演。Twitter: @setsumaruyuichi
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松坂は2大会連続のMVPに選出されるとかなり驚いたような表情を見せ、「MVPは(大活躍だった)岩隈(久志)君だと思う」と話していたが、フィールド上でのインタビューを終えると、喜びを分かち合う仲間の輪に満面の笑顔で向かっていった。
日本代表、侍ジャパンを応援していた日本人の記憶は、おそらく、ここで一度区切られていると思う。
2009年シーズン後に判明したことだが、実は、松坂はWBC前の1月、トレーニング中に右足内転筋を痛めていた。のちに「走るのもしんどくて、あの頃は出場するか辞退するか、一人で悩んでいた」という。結局、無理を押してWBCに出場した松坂は、レギュラーシーズンでは故障者リストに2度入り、4勝6敗、防御率5.76と自己最悪の成績に終わった。故障を隠していたことで球団と揉め、メディアからは激しいバッシングに遭った。
そしてそれ以降、松坂が本来の姿に戻ることは二度となかった。
日本で通算114勝、MLBで56勝。計170勝のうち、実に141勝は第2回WBC前の10年間で挙げたものだ。第2回WBCの優勝とMVPは、松坂の野球人生を大きく変えてしまうほどの代償を伴ったのだ。 第3回WBC開幕を1ヵ月後に控えた17年2月、当時ソフトバンクに在籍していた松坂を生目の杜に訪ねた時、日本代表への思いを聞かせてくれた。故障を隠して第2回大会に出場したことを問うと、「日の丸を背負うって、すごいことじゃないですか。だから、任されたら、自分の状態がどうとか、そういうことじゃないと思うんです。任された試合、その日にベストの状態で臨む。その日にできることがベストだと思うんですよね。それぐらいの気持ちはありました」と話した。
そこで結果を出した代わりに、自身の野球人生が影響を受けた面も否めないはずだが、「みんながWBCに出づらくなっちゃったのは、僕のせいでもあるんですよ。僕が状態が良くないままWBCで投げて、それ以降悪かったじゃないですか。だから、WBCに出ることのリスクとかが言われて。そういう意味では責任も感じてるんですけどね」
さらに、松坂はこう続けた。「でも、今の僕が言っても笑われるかもしれないけど、東京オリンピックだって、日の丸を背負いたいですよ。不可能に見えても目指していきたい、それぐらい日本代表って価値があると思うんです」
今回の日本代表には、大谷翔平、ダルビッシュ有、村上宗隆、佐々木朗希、山本由伸とスター選手が一堂に集結。“史上最強”との呼び声も高く、それだけに優勝への期待も大きい。そんな中、今回の侍ジャパンの勝利と、出場選手の今後の活躍を人一倍強く願っているのは、おそらく松坂大輔だろう。彼は「日の丸の価値」を他の誰よりも知っている男だからだ。
文●節丸裕一
【著者プロフィール】
せつまるゆういち。フリーアナウンサー。早稲田大学を卒業後、サラリーマンを経てアナウンサーに転身。現在はJ SPORTSなどでプロ野球やMLB中継を担当。フジテレビONE『プロ野球ニュース』にも出演。Twitter: @setsumaruyuichi
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