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侍ジャパン

韓国戦の大逆転劇に感じた只ならぬ空気感。「早くから来て良かった」と語ったダルビッシュの存在が醸成する侍ジャパンの一体感【WBC】

THE DIGEST編集部

2023.03.11

 誰もが注目するその存在がチームを一つにする。その存在が点を取られたからといって意気消沈するのではなく、むしろ、これまで以上に一つにまとまり、反撃は起こったのだった。
 
 3回裏の攻撃では先頭の源田壮亮(西武)が粘って四球で出塁。続く中村悠平(ヤクルト)も続いた。1番のラーズ・ヌートバー(カーディナルス)が1点を返す適時打。そして、2番の近藤健介がセンターオーバーの適時二塁打、5番の吉田正尚にも適時打が出て試合をひっくり返したのである。

 5回に2点、6回には5点を追加するなど、予想以上の試合展開だった。

 もちろん、それ相応の技術を持った選手たちの集まりであるというのは事実だ。ただ、あのイニングに至ってはいろんな思いが凝縮されたように感じずにはいられなかった。

 近藤はいう。

「3回表の守備の際に、自分がミスして失点にもつながっていたんで、そこでなんとかしたいという思いはありました。その中での打席でした。最悪でも犠牲フライを打とうと思って高めのボールを待っていたら、それがセンターオーバーになりました」

 感情を表に出さない近藤がベース上で小躍りしていたのもまた印象的だった。

 今年の侍ジャパンはメジャーリーガーを多く招集したとはいえ、国内組だけではリーダーが誰になるのかは非常に見えないチームだった。その中で、ダルビッシュがメジャーリーガーで唯一、直前の宮崎合宿から参加、チームの空気を作った。

 それはスーパースターだと偉ぶるのではなく、言動や姿勢で見せることで、仲間と話し合い、打ち解け合う。野球というフィルターを通して、一つになっていく作業に、ダルビッシュのようなカリスマ的なリーダーは欠かせなかった。

 ダルビッシュは改めて初日から合宿に参加したことの意義を感じている、と話す。

「合宿に途中から参加するっていうのは自分のことを知ってもらう上ですごく難しいと思いますし、何より自分がやっぱりチームメイト全員のことを早く知りたいっていうことがありました。その中でパドレスはすごく難しい決断をしてくれたんですけど、本当に今の1秒1秒がすごく宝物になっているので、早くから来てよかったなと思っています」

「宝物」だとダルビッシュはいった。

 おそらく、チームメイト全員、同じ気持ちのはずだろう。他の選手からすればダルビッシュといることが宝物になっているに違いない。

 この相互関係が何より今年のチームの持ち味かもしれない。ライバル韓国戦での大逆転劇はチームをさらに一つにする非常に意味のある1勝だった

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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