だが、新人監督はその先も見据えている。野手も、菊池涼介らを休ませながら打線を組んでいる。
5月1日には、リーグ2位タイの7セーブを挙げる一方で早くもシーズン自己ワーストの4敗を喫していた栗林良吏の出場選手登録を抹消した。本人は右足内転筋の張りにもチーム同行を直訴したというが、指揮官はやはり「しっかり治してから戻ってこい。焦ることなく、万全にして治してほしい」とリフレッシュ期間を与えることを決めた。
「投手のマネジメント」とともに新井監督が就任会見で口にしていたのは、「機動力野球の復活」だった。
昨季の26盗塁は球団史上最少。2リーグ分立後、04年の巨人の25盗塁に次ぐワースト2位という不名誉な記録だった。昨季は、成功率の低さ(シーズン通算で47.3%)からか、シーズン途中にパタリと盗塁企図数が減った。走力のある選手にスタートを切る一定の自由度を与える「グリーンライト」もなくなり、打者による個の力によって打開するしかなくなった。
今季はスタメンの顔ぶれが昨季と大きく変わらない中で、すでに9個の盗塁を記録している。開幕直後は投球前にスタートを切り、牽制によってアウトになる(記録は盗塁死)場面も散見された。首脳陣は根拠のあるミスは許容し、攻める姿勢を後押しする。新井監督だけでなく、一塁コーチを務める赤松真人外野守備走塁コーチも同じだ。 「配球を読んだり、いいスタートを切ったりすることなど求めればキリがない。求めすぎて、スタートを切れなくなることの方が良くない」。
盗塁成功率は52.9%と決して高くない。だが、企図数だけでなく、スタートを切った上でファウルとなった場面も多くある。積極的に仕掛ける姿に、セ5球団は警戒心を高めているはずだ
また、昨季リーグ3位の118犠打を記録したバント策を、今季は多用していない。投手戦必至の試合や次の1点が勝敗の行方を大きく左右する試合終盤を除けば、強攻策を取ることが多い。多用しないからこそ、バントのサインが「得点を奪うぞ」というスイッチとなる。4月まで野手が決めた6犠打(投手を含めれば全9犠打)のうち、3犠打が得点につながっている。
先述した栗林の不振と抹消という誤算はあったものの、チームの雰囲気は良い。首脳陣が示す策に選手がしっかりと呼応している印象だ。3点差試合以内は11勝10敗、6度の逆転勝利はリーグ2位と戦績にも表れている。
シーズンを重ねていくことで、チームは完成形に近づく。新井監督はどんなチームをつくり、どんなシナリオを描いているのか――。12勝12敗、勝率5割の章から、新井広島の戦いは第2章に入っていく。
文●前原淳
【著者プロフィール】
1980年7月20日・福岡県生まれ。現在は外部ライターとして日刊スポーツ・広島担当。0大学卒業後、編集プロダクションで4年間の下積みを経て、2007年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。華やかなプロ野球界の中にある、ひとりの人間としての心の動きを捉えるために日々奮闘中。取材すればするほど、深みを感じるアスリートの心技体――。その先にある答えを追い続ける。『Number』などにも寄稿。
5月1日には、リーグ2位タイの7セーブを挙げる一方で早くもシーズン自己ワーストの4敗を喫していた栗林良吏の出場選手登録を抹消した。本人は右足内転筋の張りにもチーム同行を直訴したというが、指揮官はやはり「しっかり治してから戻ってこい。焦ることなく、万全にして治してほしい」とリフレッシュ期間を与えることを決めた。
「投手のマネジメント」とともに新井監督が就任会見で口にしていたのは、「機動力野球の復活」だった。
昨季の26盗塁は球団史上最少。2リーグ分立後、04年の巨人の25盗塁に次ぐワースト2位という不名誉な記録だった。昨季は、成功率の低さ(シーズン通算で47.3%)からか、シーズン途中にパタリと盗塁企図数が減った。走力のある選手にスタートを切る一定の自由度を与える「グリーンライト」もなくなり、打者による個の力によって打開するしかなくなった。
今季はスタメンの顔ぶれが昨季と大きく変わらない中で、すでに9個の盗塁を記録している。開幕直後は投球前にスタートを切り、牽制によってアウトになる(記録は盗塁死)場面も散見された。首脳陣は根拠のあるミスは許容し、攻める姿勢を後押しする。新井監督だけでなく、一塁コーチを務める赤松真人外野守備走塁コーチも同じだ。 「配球を読んだり、いいスタートを切ったりすることなど求めればキリがない。求めすぎて、スタートを切れなくなることの方が良くない」。
盗塁成功率は52.9%と決して高くない。だが、企図数だけでなく、スタートを切った上でファウルとなった場面も多くある。積極的に仕掛ける姿に、セ5球団は警戒心を高めているはずだ
また、昨季リーグ3位の118犠打を記録したバント策を、今季は多用していない。投手戦必至の試合や次の1点が勝敗の行方を大きく左右する試合終盤を除けば、強攻策を取ることが多い。多用しないからこそ、バントのサインが「得点を奪うぞ」というスイッチとなる。4月まで野手が決めた6犠打(投手を含めれば全9犠打)のうち、3犠打が得点につながっている。
先述した栗林の不振と抹消という誤算はあったものの、チームの雰囲気は良い。首脳陣が示す策に選手がしっかりと呼応している印象だ。3点差試合以内は11勝10敗、6度の逆転勝利はリーグ2位と戦績にも表れている。
シーズンを重ねていくことで、チームは完成形に近づく。新井監督はどんなチームをつくり、どんなシナリオを描いているのか――。12勝12敗、勝率5割の章から、新井広島の戦いは第2章に入っていく。
文●前原淳
【著者プロフィール】
1980年7月20日・福岡県生まれ。現在は外部ライターとして日刊スポーツ・広島担当。0大学卒業後、編集プロダクションで4年間の下積みを経て、2007年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。華やかなプロ野球界の中にある、ひとりの人間としての心の動きを捉えるために日々奮闘中。取材すればするほど、深みを感じるアスリートの心技体――。その先にある答えを追い続ける。『Number』などにも寄稿。
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