にもかかわらず本塁打が出ていないのはその質が異なるためだ。ここで注目したいのが飛球(ライナー含む)の滞空時間である。本塁打は適切な角度をつけることで生まれる。打球角度が小さいと、ゴロやライナーになり、スタンドまでは届かない。一方で上がりすぎると、滞空時間は長いが距離は出ないフライになってしまう。
村上の飛球の滞空時間を昨季と3・4月で比較したものが【表A】である。歴史的な活躍を見せた昨季、最も割合が大きい滞空時間は5~6秒の時間帯だった(32.0%)。パワーヒッターというと滞空時間が長いフライを想像してしまうが、6秒以上のフライが特別多いわけではない。昨季の本塁打量産は打球が上がりすぎなかったことも要因と考えられそうだ。
一方で今季は異なる。昨季32.0%あった5~6秒のフライは12.0%まで低下。かわりに6秒以上の飛球が32.0%まで激増している。3・4月の村上は飛球に打球角度がつきすぎて、距離が出ていなかったようだ。また、滞空時間が4秒未満の鋭い飛球が減少しているのも成績低下の原因だろう。 このように打球の滞空時間が長いとなると、村上がボールの下を叩きすぎているのではと感じる人もいるだろう。ただ、打撃はそう単純なものではない。引っぱり打球に限定すると、村上はむしろ昨季よりフライを打てていないのだ。フライが上がっているのはセンターや逆方向の打球ばかり。これらから考えると、「ボールの上を叩こう」といったアドバイスだけではこのスランプは解決しなさそうだ。
5月に入り徐々に息を吹き返してきている村上。この復調が一時的なものなのか、完全なものなのか。それを確かめるためにも、振るべき球のみを振れているか、飛球が上がりすぎていないかに注目してほしい。
文●DELTA(@Deltagraphs/https://deltagraphs.co.jp/)
【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。
村上の飛球の滞空時間を昨季と3・4月で比較したものが【表A】である。歴史的な活躍を見せた昨季、最も割合が大きい滞空時間は5~6秒の時間帯だった(32.0%)。パワーヒッターというと滞空時間が長いフライを想像してしまうが、6秒以上のフライが特別多いわけではない。昨季の本塁打量産は打球が上がりすぎなかったことも要因と考えられそうだ。
一方で今季は異なる。昨季32.0%あった5~6秒のフライは12.0%まで低下。かわりに6秒以上の飛球が32.0%まで激増している。3・4月の村上は飛球に打球角度がつきすぎて、距離が出ていなかったようだ。また、滞空時間が4秒未満の鋭い飛球が減少しているのも成績低下の原因だろう。 このように打球の滞空時間が長いとなると、村上がボールの下を叩きすぎているのではと感じる人もいるだろう。ただ、打撃はそう単純なものではない。引っぱり打球に限定すると、村上はむしろ昨季よりフライを打てていないのだ。フライが上がっているのはセンターや逆方向の打球ばかり。これらから考えると、「ボールの上を叩こう」といったアドバイスだけではこのスランプは解決しなさそうだ。
5月に入り徐々に息を吹き返してきている村上。この復調が一時的なものなのか、完全なものなのか。それを確かめるためにも、振るべき球のみを振れているか、飛球が上がりすぎていないかに注目してほしい。
文●DELTA(@Deltagraphs/https://deltagraphs.co.jp/)
【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。