▶2019年を象徴する試合
８月12日／巨人８ー７広島／マツダスタジアム
巨|４０２ ００１ ０１０|８
広|１０２ ２００ ０１１|７
［勝］大竹寛(3-0-0）
［敗］アドゥワ誠(3-5-0)
［Ｓ］デラロサ(1-0-2)
［本］巨：ゲレーロ(15)　広：菊池涼介(10)

　昨季までの巨人ならば、おそらく負けていた試合だろう。

　３回表までに６点を挙げ、試合の主導権を握ったかに思われたが、先発・山口が大乱調。３本のタイムリーを打たれて４回途中でＫＯされると、後を受けた田口も菊池涼介に一発を浴びるなど、気づけば６対５まで追い上げられていた。

　マツダスタジアムでの広島戦は文字通り「鬼門」だった。今季の開幕カードで勝ち越すまで、広島では２年間にわたって全カード負け越し、昨年８月まで13連敗を喫していた。「またか……」という重苦しい雰囲気がベンチを包む。しかし、それを吹き飛ばしたのが、キャプテンの坂本だった。

　ベンチを一喝して暗いムードを払拭すると、６回には犠牲フライを放って待望の追加点を奪う。さらに８回にも点差を広げるタイムリーを打つなど、自らのバットとキャプテンシーでチームの“負け癖”を振り払ってみせた。

　以降の広島戦は５勝３敗と勝ち越し。天敵への苦手意識を払しょくしたことが、５年ぶりのリーグ制覇につながったことは間違いない。
  ●来季のキーマン
大城卓三

　来季の扇の要には、大城を推したい。

　球界屈指の捕手性能を誇る小林誠司も捨てがたいが、９番に投手が入る以上、打線に２つの穴を作るわけにはいかない。今後、小林の打撃が向上する望みも薄く、それならば打力ではるかに勝る大城の、キャッチャースキルの成長に期待したい。

　今季の打撃成績は、329打席で打率.265、６本塁打、OPS.718。先に述べた通り、一塁としては厳しい数字だが、捕手としては及第点だ。難しいボールをいとも簡単に弾き返すバッティングセンスには定評があり、今後も成績向上が望める。確かに盗塁阻止率は２年連続１割台と芳しくないが、原監督が「一番教科書にない、面白いリード」と評するなど、トータルの守備力は決して悪くない。

　振り返ってみれば、00年代後半から10年代初頭にかけて巨人が黄金期を築けたのは、捕手という「守備型ポジション」に飛び抜けた打力を持っていた阿部がどっしり座っていたからこそ。大城に阿部レベルの打撃を期待するのはさすがに酷だが、打線に厚みをもたせ、また他球団との優位性を得る意味でも「捕手・大城」が一本立ちすることには大きな意味がある。

文●丸山純平