専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
高校野球

高校野球では珍しい「名参謀上がりの監督」。伝統を引き継ぐ日大三・三木監督が待望の甲子園1勝【氏原英明が見た甲子園:4日目】<SLUGGER>

氏原英明

2023.08.10

 高校野球には、代替わりの難しさがある。

 誰もが知るほどの名将の存在は大きく、だからこそ、その存在に悩む。前監督が作り上げたイメージを崩してはいけないと力み、空回りする。逆に、新しいことをしようとして失敗するケースだってある。

 ただ、三木には一切の力みがない。

 「ぼくは熱い男だ」と豪語し「生徒も受け入れてくれている」と言ってのけてしまうような男である。

 三木は話す。

「小倉から引き継いで『これをやめた』と言えるようなものは一つもないです。そのまま引き続き、(小倉がやってきたことを)ずっと一生懸命努力すると。また、今の時代にこういうこと言ったらいいのか分からないですけど、男に生まれてるので、背負うものがなきゃだめだと小倉もずっと言ってきたことなんで、それは続けていきたいと思います。日大三には歴史があって、ただ自分が引き継いでいるということなので、甲子園に出させてもらっている以上、歴史をつないでいきたいです」
 
 小倉が伝統を引き継いだように、僕もやるだけ。

 その言葉に三木らしさが表れているように思う。学校の看板を小倉前監督とともに背負い支えてきたという矜持のようにも聞こえた。

 改めて監督の難しさを聞いてみると、新リーダーの顔が覗いた。

「今日はサインミスが2回ぐらいあった。それを選手がカバーしてくれたんですけど、やっぱり相手に勢いが行くような采配はしちゃいけないなと思いました。ノーアウトでランナーが走っちゃったり、ノーアウト1塁で打者が初球をフライにしてしまったり。いろいろ反省しなきゃいけないですね。(こういう失敗は)取り返しがつかなくなりますからね」

 甲子園初勝利には安堵したようでもあったが、ともあれまず第一歩を刻んだことは間違いない。強豪・日大三の新しい歴史を、これからも紡いでいってほしいものだ。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『SLUGGER』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号