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プロ野球

立浪監督を解任するだけでは根本的な問題は解決しない。長期低迷が続くドラゴンズは「MLB流球団再建」を模索するべき<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2023.08.11

「出羽守」と言われるかもしれないが、ここ10年のドラゴンズを見ていると、MLB流のドラスティックな球団再建手法を(全面的にではないにしても)取り入れるべきではないかと考えてしまう。

 現在、アメリカン・リーグ最高勝率を記録するなど快進撃を続けるオリオールズがいい例だ。

 今から5年前のオリオールズはまさにどん底状態にあった。チームは低迷し、ファーム組織も壊滅的な状態。そんな中、18年オフに就任したマイク・イライアスGMが改革に乗り出した。最初の3年間はとにかくマイナーの再建・強化に全精力を集中。主力選手を次々に放出して他球団から若手有望株を獲得し、ドラフトでも上位指名で金の卵を次々に手に入れた。また、積極的にデータを取り入れた指導を導入するなど育成方針も一変させた。

 その間、メジャーのチームは黒星街道まっしぐらだったが、注目に値するのは監督をクビにしなかったことだ。19年に就任したブランドン・ハイド監督は1年目が球団歴代ワースト4位タイの108敗、短縮シーズンの20年を経て21年はワースト3位の110敗。日本ならまず間違いなく解任されるはずだ。

 ハイド監督がクビにならなかった理由は、端的に言えばその時期は勝利よりも育成を優先していたからだ。球団が長期的なビジョンに基づいて各シーズンごとに目標を設定し、その目標に到達できたかどうかが評価基準になる。勝利より育成を優先した年なら、育成で成果を残したと判断されれば、たとえ負け越しても合格点をもらえるというわけだ。
 昨年、辛抱強く育てた若手選手が一気に芽吹き、オリオールズはシーズン終盤でまでプレーオフを争う大健闘。ハイド監督は最優秀監督投票で2位に入った。記録的な負け越しシーズンを2度も送った監督が、リーグで最も優秀な指揮官の一人に挙げられるまでになったのだ。

 もちろん、メジャーほどドライに割り切ることは日本では難しいだろう。では、そもそも今季のドラゴンズの目標は何だったのだろうか? 表向きには「CS進出」を掲げていても、そこまでの戦力が整っていないことは誰の目にも明らかだったはずだ。最大のテーマは岡林勇希、高橋宏斗に続く若手選手の台頭と新旧交代の促進で、その意味では石川昂弥が打線の中軸に定着し、現役ドラフトで加入した細川成也がブレイク(彼もまだ25歳だ)、ルーキーの村松や福永裕基、松山晋也が一軍で出場機会を得るなど一定の成果は出ている。

 だから、「記録的な低迷→立浪監督解任」という流れが必ずしも正しいとは思わない。念のために言っておくが、立浪監督を続投させるべきと言っているわけではない。何もかも監督任せにしてきた体質を抜本的に改め、中長期的なビジョンを具体的に定めた上で、選手育成に適した指揮官を生え抜きかどうかにかかわらず招聘する――という道を取らない限り、誰を監督にしても大して変わらないだろう。

 星野仙一、落合博満という圧倒的なカリスマ性を持ったの指揮官の下、ドラフトやFAなどで多額の資金を投入して勝ってきたドラゴンズ。だが時代は流れ、今やどちらの選択肢も不可能に近い。だとすればなおさら、長期的なビジョンに基づいたチーム作りが求められているはずだ。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)
 
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