専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

大谷翔平はフィリーズでプレーするべきだ!――ブライス・ハーパーとフィラデルフィアの幸福な関係を見て思うこと<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.10.16

「Atta boy」というのは、「頑張ったね」、「よくやった」を意味するスラングだが、この場合はもちろん、試合終了のダブルプレーを「走塁ミス」だとして、手痛い敗戦の責任を背負わされたハーパーに対する皮肉である。

 よくある話なのだが、今はSNS全盛の世の中である。

 この一件は瞬く間にフィリーズファンの間に広まり、続く第3戦の試合前、アルシアがウォームアップのために敵地球場のフィールドに姿を現しただけでブーイングが怒号のように飛んだ。彼が打席に立つと、さらに大きなブーイングが起こり、フィリーズファンは「俺たちが応援する選手に、お前はやっちゃいけないことをしたんだぜ」と迫ったのだ。

 タフな街で生きるタフな人々を象徴する、少し意地悪な声援に応えたのは、他ならぬハーパーだった。前出の勝ち越し3ラン本塁打を放つと、彼はベースを一週する時に二塁ベースの近くにいたアルシアを、睨みつけたのだ。

「Did you see that(あれ見た)?」と隣に座っていたフィリーズ番の記者に言われるまで気づかなかったが、そのシーンはテレビでも再生され、再びSNSで拡散された。ハーパーは続く5回にも、センター後方へ2打席連続となるソロ本塁打を放ち、やはり二塁ベースを回る時にアルシアを睨みつけた。

 試合後、(質問のタイミングは前後するが)彼はこんな風に受け答えしている。
――どうやってアルシアの発言を知ったのか?

「チームメイトから。それだけのことさ。彼らは俺を見て、『で、どうすんだよ?』みたいな感じだった」

――アルシアの言葉は、この試合のモチベーションになったのか?

「誰かが何かを言ったら、だよ。どちら側にいても。俺たちがプレーしているのはとても激しい競争があるゲームなんだ。俺は発言とかそういうのを、愉しんでいる。前にも言ったことがあるけど、WIP(地元のスポーツ専門FM局)を聞いてたら、いつだってそういうことは聞こえてくるけど、俺は愉しんでいる。

 そういうのはこのゲームをプレーする一つの理由になってるし、(ホームランを打ってアルシアを睨みつける)ああいう瞬間やそういうチャンスにプレーすることを愉しんでいるだけなんだ」

――睨みつけて楽しかったかい?

「ああ、彼をしっかり睨みつけたよ」

――何か言ったのか?

「いや、(そんなことは)絶対にしない」

 最後のひと言は、「挑発されても、こっちから挑発はしない」という慎重な気持ちか、それとも伝統的なベースボールの流儀に対するリスペクトか。大事なのは、「俺がここ(フィリーズ)と契約したのには理由があるんだ」と彼が続けた部分にある。

「全力を出しきって、この街、(オーナーのジョン・)ミドルトンさん、この球団にトロフィーをもたらすことだ。それがすべてで、考えただけで鳥肌が立つ。俺は本当にこの場所を愛しているんだよ」
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号