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プロ野球

今ドラフト高校No.1投手・前田悠伍が求めたストレートの完成度。失意の夏を経て最後の最後にワールドカップで取り戻した輝き<SLUGGER>

谷上史朗

2023.10.26

 実際、三振を多く奪った試合でも、ストレートで決める時は大半が両コーナーをきっちり攻めての見逃し三振が多い。空振りで仕留める時は、「最も自信がある」と言い続けてきたチェンジアップが勝負球になっている。「この先、体を鍛えて練習を積んでいけばストレートの球速は上がっていく」という声に本人は頷きつつも、「高校生活の中でもうワンランク上のストレートを見たい」という願望が常にあった。

 本人ともよくこのあたりの話はしてきたが、最後の夏も、筆者の個人的な感想で言えば、ストレートに求めたような変化は見えなかった。ひと言でいえば、物足りなかった。

 前田は続く春の大阪大会と、近畿大会ではベンチから外れた。もう一度鍛え込んで夏に備える予定だった。しかし、ここでも軽いつまずきがあった。強化メニューでの練習が2週間程過ぎたところで、左ヒジに違和感が出た。このため十分な投げ込みが出来ないまま最後の夏の開幕を迎えた。
 
 順調さを欠く中、夏は2試合の登板のみだった。4回戦の東海大仰星高戦では6回2失点。三振は4つしか奪えず、四死球は4つも与えた。さらに右打者に2本の本塁打を浴びた球種は、ともにストレートだった。さらに、試合中に左足親指の皮がめくれるアクシデントまでも生じた。

 これで登板間隔が空いてしまい、夏の2戦目が決勝の履正社高戦となった。最大のライバル相手に8回3失点、6安打4四死球。確かに初戦よりストレートの威力は上がっていたが、チームは0対3で敗れ、自身4度目の甲子園はならなかった。のちに大阪桐蔭高の西谷浩一監督が、無念を噛みしめてこう振り返っていた。

「僕にしたらほぼぶっつけ。あの状態であれだけ投げられたのはさすがで、甲子園に進めていればもっと状態が上がって間違いなくこれまで以上のピッチングが出来たはず。それだけに行かせてやりたかったですが......」
 
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