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プロ野球

【ブレイクスルーの舞台裏】西武投手陣が「成功への根拠」を知った菊池雄星との濃密な3週間

氏原英明

2019.12.23

 もっとも、石垣島でのトレーニングで彼らが得たのは、効率的なウエイトトレーニングの方法だけではない。人がハイパフォーマンスを発揮していく根拠を知れたのが、最大の収穫だったと言えるだろう。

「なぜ」の提示は清水氏が指導の中で意識していたところだ。

 なぜ、この練習をするのか。なぜ、この重量をあげるべきのか。なぜ、練習の順序はこのようにして行うのか。練習メニューを一つずつ理解しながらこなしていくことで、自身の体がどのようになっているのかを感じられる。トレーニング中はもちろんのこと、ピッチングにおいても、うまくいっていることと、そうでないことの理解が深まるのだ。

 高橋光はトレーニングを通して学んだことをこう語っている。

「“感覚を大事にしろ”と今まで言われてきたんですけど、正直、自分のどこがどうなっているのか分かっていなかった。でもトレーニングを体感した今は、わかるようになってきました。開きが早いとか、自分のフォームが崩れている部分などです。なんで良かったのか、悪かったのか。100%じゃないけど、答え合わせができるようになりました」
 
 7月8日に1軍初昇格を果たした平良は、ブルペンを支える一人として、シーズン最後まで走り切った。ファームでは開幕から先発ローテーションとして回ってきたが。1軍の苦しい投手事情からリリーフ調整に入ると、救世主のような存在になった。

 クライマックスシリーズ(CS)では登板過多によって、著しくパフォーマンスを落としていた平井克典に代わって重要な場面を任されるなど、2年目にして大ブレークを果たした。

「重要な場面で使ってもらえた嬉しさはあります。点を取られた試合もありましたけど、しっかり抑えられるように頑張りたいですね」

 CSの敗退が決まったときにそう語っていた平良は、シーズン終了後すぐに菊池に連絡を取ったという。

 このオフにも菊池とトレーニングを続けたいからだ。

 菊池はその姿勢に驚きを隠さない。

「貪欲な姿勢というか。このオフは石垣にも帰らずに、ずっと練習をしたいからついていきたいと言ってきました。あれほど、オフに熱心な若い選手を見たことがない。僕が出会って初めてかもしれないです」

『石垣組』

 2人に加え、1軍に居続けた佐野も含めた3人は、このオフ、その拠点をアリゾナに変えてトレーニングを行う。また、メンバーも増えるそうだ。

 菊池の秘蔵っ子たちは、パワーアップして、来季も重要な戦力になってくれるはずだ。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。 

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