ちなみに2015年当時、デスパイネはNPBのソフトバンクに所属する一方、オフシーズン中はキューバに帰国し、アラサネス・デ・グランマの一員として母国リーグに出場した。それがピナール・デル・リオのメンバーとしてカリビアン・シリーズでプレーしたのは、補強選手という制度があるからだ(日本の都市対抗野球をイメージするとわかりやすい)。
補強選手の仕組みは大会の盛り上がりにも一役買っている。例えば今年、ベネズエラのティブロネス・デ・ラ・グアイラは10選手を補強し、その一人がMLBでも活躍したオデュベル・ヘレーラ(元フィリーズ)だった。ドミニカの名門ティグレス・デル・リセイはロビンソン・カノー(元マリナーズ)、46歳になった元中日のラウル・バルデスを加えた。ロースター25人のうち補強選手の数は無制限で、チームごとに大きく異なる。いい意味で、そうした大らかさもラテン気質と言えるだろう。
カリビアン・シリーズは球団単位の大会なので、外国人選手も出場する。今年で言えば、ベネズエラのラ・グアイラにはキューバ人のヤシエル・プイグ(元ドジャース)や2013・17年WBCブラジル代表のレオナルド・レジナット(元ツインズ傘下)、ドミニカのリセイには2017年WBCコロンビア代表のホーヘイ・アルファロ(元フィリーズ)、初出場となったニカラグアのヒガンテス・デ・リバスでは2018年から巨人に2年間在籍したサムエル・アダメスがプレーした。
その他のメンバーでは、メキシコのナランヘロス・デ・エルモシージョには昨季31本塁打のアイザック・パレイデス(カブス)、キュラソーのキュラソー・サンズにはウラディミール・バレンティン(元ヤクルト)、ディディ・グレゴリウス(元ヤンキース)、ジュリクソン・プロファー(パドレス)、アンドレルトン・シモンズ(元エンジェルス)、パナマのフェデラレス・デ・チリキにはクリスチャン・ベタンコート(マーリンズ)など日本のファンにも馴染みのある選手が数多くプレーした。
これほど多様性のある大会やメンバーは、中南米ならではだ。選手たちはパッションとエモーションを前面に押し出してプレーし、ノリのいい観客が後押しする。
出場国の変遷を経ながら発展するカリビアン・シリーズは、今年はアメリカを開催地とするなどビジネス的にも拡大への意欲が強い。世界中からさまざまな要素をミックスして発展していくのは、ラテン特有の醍醐味だ。
2025年大会にジャパンブリーズが参加するのはそうした理由に加え、開催地がメキシコ北西部のメヒカリであることも関係している。CPBCのフランシスコ代表が説明する。
「メヒカリは非常に寒く、ナイターでの開催が難しい。大会は2月に行われ、摂氏2度ぐらいまで気温が下がるため、試合数も限られるので今回は5ヵ国での開催にしました。招待国をどこにするかとなり、参加が決まれば国際的にも非常に大きい日本を選びました」
筆者は中南米野球に魅了され、WBCが開催されるたびにドミニカやベネズエラ、プエルトリコといった中南米諸国が集う"死の組"に日本が入ったら、どんなにエキサイティングな戦いになるのだろうかと夢想してきた。
正直、カリビアン・シリーズの出場メンバーはWBCより大きく劣る点は否めない。特に日本はNPB組の未出場が濃厚で、メジャーリーガーも出ないだろう。ジャパンブリーズは社会人野球や独立リーガーを中心にメンバーを考えているが、そこに意義があるとラミレス監督は話した。
「カリビアンシリーズにはメジャーのスカウトもたくさん来ますし、ベネズエラやメキシコ、他の国のリーグのスカウトもたくさん来る大会です。アジアンブリーズは若い選手が中心の編成になるなか、世界で活躍するチャンスにも繋がる。結果的に野球の国際化や普及に貢献できると考えています」
ラミレス監督が語るように、社会人選手や独立リーガーはラティーノを相手に高いモチベーションで挑むはずだ。他国の出場チームではFA(日本で言う自由契約)の選手が新シーズンの契約を勝ち取ろうと必死でアピールするように、日本でもそうした選手の出場もあるかもしれない。
陽気でエネルギッシュなラティーノに囲まれた大会で、果たして日本人がどんな持ち味を発揮するのか。WBCでは実現されない戦いが、カリビアン・シリーズでは見られるのも魅力と言えるだろう。
開催地はメキシコとアメリカの国境付近にあるバハ・カリフォルニア州のメヒカリ。今から開幕が待ち遠しくてならない。
<著者プロフィール>
なかじま・だいすけ。スポーツ・ノンフィクション作家。1979年埼玉県生まれ。上智大学卒。著書『中南米野球はなぜ強いのか』で第二十八回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。昨年2月には『山本由伸 常識を変える投球術』(新潮社)を発表。
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補強選手の仕組みは大会の盛り上がりにも一役買っている。例えば今年、ベネズエラのティブロネス・デ・ラ・グアイラは10選手を補強し、その一人がMLBでも活躍したオデュベル・ヘレーラ(元フィリーズ)だった。ドミニカの名門ティグレス・デル・リセイはロビンソン・カノー(元マリナーズ)、46歳になった元中日のラウル・バルデスを加えた。ロースター25人のうち補強選手の数は無制限で、チームごとに大きく異なる。いい意味で、そうした大らかさもラテン気質と言えるだろう。
カリビアン・シリーズは球団単位の大会なので、外国人選手も出場する。今年で言えば、ベネズエラのラ・グアイラにはキューバ人のヤシエル・プイグ(元ドジャース)や2013・17年WBCブラジル代表のレオナルド・レジナット(元ツインズ傘下)、ドミニカのリセイには2017年WBCコロンビア代表のホーヘイ・アルファロ(元フィリーズ)、初出場となったニカラグアのヒガンテス・デ・リバスでは2018年から巨人に2年間在籍したサムエル・アダメスがプレーした。
その他のメンバーでは、メキシコのナランヘロス・デ・エルモシージョには昨季31本塁打のアイザック・パレイデス(カブス)、キュラソーのキュラソー・サンズにはウラディミール・バレンティン(元ヤクルト)、ディディ・グレゴリウス(元ヤンキース)、ジュリクソン・プロファー(パドレス)、アンドレルトン・シモンズ(元エンジェルス)、パナマのフェデラレス・デ・チリキにはクリスチャン・ベタンコート(マーリンズ)など日本のファンにも馴染みのある選手が数多くプレーした。
これほど多様性のある大会やメンバーは、中南米ならではだ。選手たちはパッションとエモーションを前面に押し出してプレーし、ノリのいい観客が後押しする。
出場国の変遷を経ながら発展するカリビアン・シリーズは、今年はアメリカを開催地とするなどビジネス的にも拡大への意欲が強い。世界中からさまざまな要素をミックスして発展していくのは、ラテン特有の醍醐味だ。
2025年大会にジャパンブリーズが参加するのはそうした理由に加え、開催地がメキシコ北西部のメヒカリであることも関係している。CPBCのフランシスコ代表が説明する。
「メヒカリは非常に寒く、ナイターでの開催が難しい。大会は2月に行われ、摂氏2度ぐらいまで気温が下がるため、試合数も限られるので今回は5ヵ国での開催にしました。招待国をどこにするかとなり、参加が決まれば国際的にも非常に大きい日本を選びました」
筆者は中南米野球に魅了され、WBCが開催されるたびにドミニカやベネズエラ、プエルトリコといった中南米諸国が集う"死の組"に日本が入ったら、どんなにエキサイティングな戦いになるのだろうかと夢想してきた。
正直、カリビアン・シリーズの出場メンバーはWBCより大きく劣る点は否めない。特に日本はNPB組の未出場が濃厚で、メジャーリーガーも出ないだろう。ジャパンブリーズは社会人野球や独立リーガーを中心にメンバーを考えているが、そこに意義があるとラミレス監督は話した。
「カリビアンシリーズにはメジャーのスカウトもたくさん来ますし、ベネズエラやメキシコ、他の国のリーグのスカウトもたくさん来る大会です。アジアンブリーズは若い選手が中心の編成になるなか、世界で活躍するチャンスにも繋がる。結果的に野球の国際化や普及に貢献できると考えています」
ラミレス監督が語るように、社会人選手や独立リーガーはラティーノを相手に高いモチベーションで挑むはずだ。他国の出場チームではFA(日本で言う自由契約)の選手が新シーズンの契約を勝ち取ろうと必死でアピールするように、日本でもそうした選手の出場もあるかもしれない。
陽気でエネルギッシュなラティーノに囲まれた大会で、果たして日本人がどんな持ち味を発揮するのか。WBCでは実現されない戦いが、カリビアン・シリーズでは見られるのも魅力と言えるだろう。
開催地はメキシコとアメリカの国境付近にあるバハ・カリフォルニア州のメヒカリ。今から開幕が待ち遠しくてならない。
<著者プロフィール>
なかじま・だいすけ。スポーツ・ノンフィクション作家。1979年埼玉県生まれ。上智大学卒。著書『中南米野球はなぜ強いのか』で第二十八回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。昨年2月には『山本由伸 常識を変える投球術』(新潮社)を発表。
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