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高校野球

【甲子園熱戦レポート│7日目】「子供たちはやはり打ちたいですから」低反発バット導入でも野球を変えなかった青森山田の“矜持”<SLUGGER>

氏原英明

2024.08.13

「ホームランを打っているのバッターはみんな金属で打っている選手ばかりなので、僕もそうしようかなと思ったりしましたけど、僕はやはりかっこ良さが勝ちました。練習でも金属は使わないようにしています」

 長く木製バットを使用してきたことで、多くの使い方も覚えてきたという吉川はこう続けた。

「木製を使う上で意識しているのは手首をこねないということですね。ボールの軌道に素直に出すことを意識しています。スウィングでは『お尻で振る』というか、身体の中心の軸で振るということを意識していきます。お尻を締めるように意識をしてバットを振っています」

 実はこの日、吉川、對馬、そして4番の原田純希の主軸3人は無安打だった。むしろ、今大会2本目の本塁打を放った佐藤洸史郎ら2年生が目立っていた。

 ただ、主軸が止まっても、12安打を集めて勝てるということは、それほどチームが取り組んでいるバッティングのレベルが高いということの証左でもあるだろう。
 
 兜森監督は語る。

「(3~5番が無安打)向こうのバッテリーも警戒して丁寧に攻めていた結果だと思う。そういうのは今後も出てくると思います。その代わり、周りの選手が活躍したことが今日の収穫でした。2年生が心配でしたけど、(ホームランを打った)佐藤らは2年生ですから良かったですね。對馬、吉川の2人にとって(木製バットは)練習の材料ですからね、打てないと『何で木製バットを使っているんだ』という風になりますからね。そういうプレッシャーと戦いながら、だいぶいいバッティングになってきています」

 センバツではベスト8まで進出した青森山田。当然、今大会でも優勝候補の一角に挙げられている。

 4番の原田は言う。

「投手を中心にしっかり守って、バッティングで圧倒していけたらと思います」

 時代の流れに抗うかのように、低反発バットでも打撃のチームを目指してきた青森山田が好発進した。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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