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プロ野球

【なぜ日本野球はバントを“乱用”するのか?:第4回】「バント=非効率」の根拠を説明できる解説者、メディアの重要性<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2024.12.20

――「一つの手段」ということは、たとえ一打サヨナラの場面になるとしても、バントが強攻よりも有効性が上回ることはない、ということですか?

宮下 そもそもランナーが出ている時点で、たとえ全盛期のダルビッシュが相手でも得点には近づいているということですから。基本的にどの投手でもランナーを背負った場面ではパフォーマンスが若干下がりますよね。また、出塁を許している時点で万全のパフォーマンスではない可能性もあります。なので、あくまで選択肢の一つとしてバントはありだと思いますが、直前の打者が打っているんだから、打てないと決めつけるのは合理的ではないですよね。

岡田 DELTAでも、すごい投手と打てないバッターの組み合わせの場合を検証したことがありますが、そういった状況でもバントが有効になるケースはあまり増えなかったですね。そう考えると、今のプロ野球はみんなが思っている以上にバントをしすぎていると感じますね。

宮下 先ほども言った通り、打力が極端に低い投手が打席に立っているケース以外では、バントより打った方がいいということになりますね。マクロに見れば、バントの有効性はほとんどないと言えます。

岡田 もちろん、三塁手が極端に後ろに守っている場合などに奇襲としてバントを選択肢から外す必要はないと思いますが、少なくともランナーが出た時にファーストチョイスでバントするくらいなら、ヒットを打てばいい、ホームランを打てばいいということになります。攻撃としては当たり前の話ですよね。
 
――バントを多用することで、シーズン換算でどれくらい得点を損していることになるのでしょうか?

宮下 以前、計算したことがありますが、143試合換算で10点ほどマイナスになっています。勝利数換算で言うと1勝分くらいです。

――CS争いが1勝の差で決まるシーズンが少なくないことを考えると、1勝分と言っても無視できない差ですよね。

岡田 そうです。

――ということは、セイバーメトリクスに明るく、バントをほとんどしないMLBの監督が日本に来たら、大きなアドバンテージを得る可能性もありますね。

岡田 あると思います。ただ、後は選手にどうやって信じさせるかが大きいと思うんですよね。

――トレイ・ヒルマンが日本ハムの監督を務めていた頃、当初はバントをさせずにいたら選手からの抵抗が強くて、安心させるためにバントのサインを出していた……という逸話がありましたね。

岡田 先ほども宮下が言ったように、バントとヒッティングの差は年間で10点くらいなので、選手が平常心でプレーできないんだったらバントをする選択もありなのかなとは思います。ただ、近年はMLBで大谷翔平(ドジャース)が2番を打ったりしているのを見ているので、選手の側にも「2番にバントをさせる」以外の選択肢を浸透させられる可能性は高まっていると思いますけどね。
 
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