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プロ野球

バレンティン加入で勃発した過酷なサバイバル。ソフトバンクの分厚い戦力層を生かす起用法は?

喜瀬雅則

2020.02.05

 まず野手に関してだが、現時点では東京五輪の出場権を獲得するための大会にキューバ代表として、デスパイネとグラシアルが参加予定で、この2人は開幕時に不在の可能性が濃厚。この時のカバーが、バレンティンの“最初のミッション”。

 2人の復帰後は、この3人に、内川聖一を加えた4人のうち、3人がスタメン、1人が代打でスタンバイという形になりそうだ。例えば、左翼グラシアル、一塁内川、DHデスパイネ、代打バレンティン。この3ポジションを4人で回していく形だが、この4人はいずれも右打者。相手投手の左右に応じて、左の中村晃が一塁、左翼に入るケースも出てくる。

 グラシアルは、サードもできるため、松田宣浩に代わって三塁を務める場合もある。他球団なら、4番を務めてもおかしくない顔ぶれの中から「代打の1番手」が出てくる。恐ろしすぎる。
 
 むしろ、悩みが深いのは投手の方だろう。
 先発タイプの左腕は、今年39歳を迎える和田毅と、3年目の24歳・大竹耕太郎。表ローテ、裏ローテにそれぞれ左腕が1枚ずつ入る形が理想だが、和田も大竹も、フルシーズンを通しての活躍となれば、昨季の投球ぶりから考えると、現時点では少々疑問符がつく。実力者のムーアが安定したピッチングを見せれば、先発ローテーションから簡単に外せなくなる。そうすると、残る枠は「1」になる。

 先発枠には、昨季までの5年間で通算41勝の右腕・バンデンハークもいる。ブルペン組の左腕は、モイネロ以外にサイドハンドの嘉弥真新也しか見当たらず、モイネロの存在価値は高い。この4人から「2枠」を選ぶのは至難の業だ。それだけ、ソフトバンクの「競争」が激しい証拠でもある。

 サファテが復活すれば、そのライバルは昨季の守護神・森唯斗になる。グラシアルと松田宣浩、デスパイネとバレンティン、ムーアとバンデンハークが先発枠を争い、モイネロもセットアッパーの地位を死守しようと奮闘する。

 さらに3軍には、メジャーのドラフト1巡目指名を受けながら、昨年6月にソフトバンクにやって来た20歳のカーター・スチュワートもいる。6年契約の2年目右腕は、まだじっくりと育成する段階だが、スチュワートは「1軍で投げたい」。先輩たちを脅かす存在になる可能性も、なきにしもあらず…なのだ。

 まさしく、誰一人として、まったく安心できない。昨季までの10年間で、6度の日本一に輝いた王者・ソフトバンクにとって、それが強さの“源泉”でもある。

 2月の宮崎から、弱肉強食、過酷なサバイバル戦が、さっそく火ぶたを切る。

取材・文●喜瀬雅則(スポーツライター)

【ソフトバンクキャンプPHOTO】目指すは4年連続日本一!2020年のスローガンは「S15(サァイコー!)」

【著者プロフィール】
きせ・まさのり/1967年生まれ。産経新聞夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で 2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。第21回、22回小学館ノンフィクション大賞で2年連続最終選考作品に選出。2017年に産経新聞社退社。以後はスポーツライターとして西日本新聞をメインに取材活動を行っている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)「不登校からメジャーへ」(光文社新書)

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