奪三振率が落ち、速球とスプリットのピッチング・バリューと呼ばれる数値が落ちたのは、以前のコラムでも書いた。それに加えて今季は体力的な問題もあった、と今永は言う。
「シーズン162試合と、ポストシーズンを全部勝ったとしたら、プラス20試合、ワールドリシリーズまであると考えたら、そこの体力が足りてないっていうのは痛感している。他のメジャーの選手って、9月とか10月とか目の色が違う。そういうメジャーリーガーの本気に敵わなかったのがこの9月、10月。それが学びですし、このメジャーリーガーに勝つためには、何をしなければいけないのかってのを、今日の帰り道から考える必要がある」
かつてのノーラン・ライアンや斎藤隆のように、年齢を重ねてからより洗練された投手になって球速を維持、もしくは向上させた投手はいる。ダルビッシュ有(パドレス))のように、何度もサイ・ヤング賞候補になりながら、自分が今、持っている常識を疑いながら「昨日の自分」より良くなると思えば、どんどん、新しいことにチャレンジして成功している人もいる。
そして今永にも、きっとそうなる資質はある。
「正直、一年間ずっと苦しかった、何も見つからないまま終わった。防御率とか勝ち星とか含めて、数字ほど内容は全然良くない。選手としてはダメだった。でも、自分の人格までがダメになったわけじゃないんで、もう一度いい選手になるために、こういう苦しい時が誰かに見られてますしね。ここで何をするのかが人間としては大事なので、投げ出さずに、逃げずに立ち向かっていこうと思う」 ポストシーズンという名のお祭りは終わり、その熱気は一瞬にして消え失せた。5年ぶりのポストシーズンを闘い終えたばかりのカブスたちが、お互いに別れを告げる中、今永は今後の予定の中に、とある練習場へ行くことを明かした。一方、鈴木もさほど気負った様子はなく、こう言うのである。
「明日? 荷物整理もあるんで球場には行きますけど、ちょっとトレーニングもやっときたいっすね」
まあ、これですべて終わったわけじゃないから、と励まされているような気がした。考えてみれば、鈴木も今永もプロのアスリートなのだ。敗戦に打ちのめされても、不調に苛まれても、いつも立ち直ってくる。調子の善し悪しは彼らが作る物語の一部であり、ハッピー・エンディングのためのお膳立てに過ぎないのだろう。
今はただ、彼らがシーズンを戦い終えたことを、心の底から称えるのみ。最後まで諦めず、それぞれの立ち位置で闘い続けた両雄に、拍手を送るのみである。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、
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