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【今日は何の日】日本に、世界に衝撃が走ったイチロー引退。“伝説”の引退会見をもう一度~前編~

2020.03.21

最後は両軍、そして場内のファンが全員スタンディング・オベーションで見届けた。(C)Getty Images

最後は両軍、そして場内のファンが全員スタンディング・オベーションで見届けた。(C)Getty Images

―― 今日は涙がなく、むしろ笑顔が多いように見えたのは、この開幕シリーズが楽しかったということだったのでしょうか?

「え~っと、これも純粋に楽しいということではないんですよね。やっぱり、誰かの思いを背負うというのはそれなりに重いことなので、そうやって1打席1打席立つことって、簡単ではないんですね。だから、凄く疲れました。で、やっぱり1本ヒットを打ちたかったし。応えたいって。当然ですよね、それは。

僕にも、『感情がない』って思っている人がいるみたいですけど、あるんですよ。意外とあるんですよ。だから、結果残して、最後迎えたら一番いいなと思っていたんですけど。ま、それはかなわずで。ま、それでもあんなふうに球場に残ってくれて。『死んでもいい気持ち』とはこういうことなんだろうなって思います。死なないですけど。そういう表現をする時って、こういう時なのかなって思います」

――「最低50歳までは現役」とおっしゃっていたと思うんですが、日本のプロ野球に戻ってきてプレーをするという選択肢はなかったんでしょうか。

「なかったですね」

―― どうしてでしょうか?

「それはここでは言えないなぁ。ただね、最低50までって本当に思ってたし。まぁ、それは叶わずで。有言不実行の男になってしまったわけですけど。まぁでも、その表現をしてこなかったらここまでできなかったかもなという思いもあります。だから、言葉にすること。難しいかもしれないですけど言葉にして表現することというのは、目標に近付く一つの方法ではないかなと思っています」
 
―― これまで野球に費やしてきた時間が空くわけですが、どうされていくのでし
ょうか?

「まぁちょっと、今は分からないですね。でも多分、明日もトレーニングはしてますよ。うん。僕、じっとしていられないから。それは動き回っているでしょうね。だからなんか、ゆっくりしたいとか全然ないですよ。全然ないです。多分、動き回ってます。うん」

―― イチロー選手の生き様でファンの方々に伝えられたことや、伝わっていたらうれしいと思うことはありますか?
 
「生き様というのは僕にはよく分からないですけど。生き方というふうに考えれば。先ほどもお話しましたけど、人より頑張ることなんてとてもできないんですよね。あくまでも秤は自分の中にある。それで自分なりに、その秤を使いながら、自分の限界を見ながら、ちょっと超えていく、ということを繰り返していく。そうすると、いつの日かなんか、こんな自分になっているんだっていう状態になって。

だから、少しずつの積み重ねでしか自分を超えていけないって思うんですよね。一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて続けられない、と僕は考えているので。まあ地道に進むしかない。進むというか、進むだけではないですね。後退もしながら。後退しかしない時期もあると思うので。でも、自分がやると決めたことを信じてやっていく。でも、それは正解とは限らないんですよね。間違ったことを続けてしまっていることもあるんですけど。

でもそうやって、遠回りすることでしか本当の自分に出会えないというか。そんな気がしているので。そうやって自分なりに重ねてきたことを、まぁ今日のあのゲーム後の、ファンの方の気持ちですよね。それを見た時に、ひょっとしたらそんなところを見ていただいていたのかなというふうに。それは嬉しかったです。そうだとすると凄く嬉しいし、そうじゃなくても嬉しいです。あれは」
 
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