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高校野球

【夏の甲子園中止から考える高校野球のこれから│前編】こういう時こそ自分を強くするいいチャンス。理想の球児像に縛られる必要はない

SLUGGER編集部

2020.05.31

――お二人とも長年、高校野球を取材してこられて、選手たちが甲子園に抱く思いをよく分かっておられると思いますが、今の3年生にどんな言葉をかけてあげたいですか?

氏原 僕は身内がまさに高校3年生の球児なんですが、意外とドライに「早く決めてくれ」と言っていましたよ。「オレはバット振ればいいのか、勉強したらいいのか分からん」と。確かに泣いている子もいますけど、今の高校生は意外と強い。「ここまできたら中止になるだろうな」って状況を分かっている子も多いので、変に意識するよりは、その子らの成長を見守ってほしいですね。その身内もブツブツ言いながらも、毎朝トレーニングして、昼過ぎから夜遅くまで勉強してます。

西尾 先日、あるメンタルトレーナーの方に取材したのですが、その人が言うには「自分ができることとできないことを整理して、自分に何できるかを考えること」だと。甲子園が中止になるのは自分の力ではどうしようもないことだから、そういう状況に置かれた今、自分に何ができるかをまず考えて整理するのが第一歩だと。落ち込むなら落ち込んだっていいし、無理にすぐ気持ちを切り替えるよりも、落ち込みながらも整理するっていうことが大事だというのは、すごくその通りだと思いました。
 
 あとは、こういう状況になると「大人の出番だ」という人がよくいますけど、18歳の高校3年生は、決して何もできない子どもではない。自分で情報を収集したり、行動したりすることはいくらでもできるはずです。今回のことはそれこそ100年に一度あるかないかだし、こういう時こそ自分が強くなれるいいチャンスだと思って、いろんなことに取り組んでほしいですね。

 仙台育英高の須江航監督が、選手たちのプレー動画を作って大学に送るという報道がありました。確かにいい話だなとは思うんですが、個人的には選手自身がこういうことをやった方がいいと思う。もしくは、選手の方から監督に「こういうことをやってもらえませんか」と働きかけるとか。大人がしっかりするのはもちろんですが、生徒自身にもできることはいくらでもあるんじゃないかと思いますね。

氏原 ちょっと高校球児を子供扱いしすぎなんですよね。手を差し伸べる必要のある子はもちろんいるけれど、そこまで「かわいそう」って下に見る必要もないんですよ。

西尾 確かにファンやメディア含め、「理想の高校球児像」にこだわりすぎな感じがありますよね。「ひたむきに野球に打ち込む純真な子供たち」というような。でも、球児たちがそのイメージ通りに振る舞う必要はないと思いますし、「甲子園は中止ですか。なら勉強に切り替えます」というくらいの子がいてもいい。世間が作り上げてきた高校球児像に選手が縛られる必要はないですよね。
 
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