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高校野球

【夏の甲子園中止から考える高校野球のこれから│前編】こういう時こそ自分を強くするいいチャンス。理想の球児像に縛られる必要はない

SLUGGER編集部

2020.05.31

氏原 世間の風潮が足を引っ張っているところはありますよね。球児がかわいそうだという記事をメディアが載せることで、余計みじめにしているようなところもある。開催を求める署名活動とかも僕はあまり好きではないです。逆に球児たちを苦しめるだけじゃないかと思います。

――氏原さんは、代替大会で長期のリーグ戦を行う方式を提案しています。

氏原 「夏の甲子園が中止になってかわいそう」という話以前に、そもそも球児たちは去年の秋以降、公式戦をしていません。スポーツの楽しみは試合をやってこそ、まずは試合をさせてあげたいというのが僕の中にあって、8月から翌年3月まで長期のリーグ戦を開催することを提案しました。来年の選抜もできるかどうか分からないので、今のうちにできるだけたくさん試合をさせてあげる。

 ただし、3年生が出場できるのは8月いっぱいまで、という規定にしておく。1試合出ただけで引退してもいいし、プロや大学にアピールしたい選手は、最後まで出場してもいい。引退のタイミングは彼らに任せればいいんです。とにかく、試合をする機会をいっぱい作ってあげるべきです。彼らに力を発揮できる場を用意してあげられていないということをもっと考えるべきだと思います。
 
西尾 選手たちが試合をできていないというのは本当にその通りですよね。早稲田実業は不祥事があったので、秋の大会も出場を辞退して、それからずっと公式戦をしていない。

 3年生がいつ引退できるか選べるというのはいいアイデアだと思います。「もう十分だ」という子は無理に出る必要はないし、プロや大学、社会人で続けたい子は最大限試合に出ればいい。試合が難しいなら、先ほどの話と重なりますが自分で動画を撮るなりして発信すればいいと思います。あまり注目されない地方の大学にいる選手は、以前からこういう形式でアピールしています。バリバリのドラフト候補の選手だって、ツイッターに自分のプレー動画を載せていたりする。こういう「何とかして見てもらおう」という姿勢は、アピールする場がなくなってしまった今の高校生はすごく参考にできるんじゃないかと思います。
【後編へ続く】※後編は6月1日朝5:30に配信予定

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【プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。ドラフト、アマチュア野球情報サイト「プロアマ野球研究所(PABBlab)」を2019年8月にリリースして多くの選手やデータを発信している。
 

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