専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

フォーム改造も“オンライン指導”?コロナ禍の中で石川柊太を飛躍させた「REBASE理論」とは

喜瀬雅則

2020.08.11

 シャーザーは身長191センチ、モートンも196センチ。長身の右腕ながら、2人ともスリークォーターとサイドスローの中間、時計でいえば「2時」の位置から右腕が出てくる。長身=投げ下ろし、という日本の定説にはまったく当てはまらない。さらに、ヒジのしなりを使う「しなやかな投げ方」よりも、上半身の横回旋に合わせて腕も横に振る、つまり「動きのベクトル」を揃える方が威力を増すのは、力学的に見ても明白だろう。そこで石川は、2人の投球を徹底的に研究した上で、シャーザーをお手本に選んだ。サイ・ヤング賞3度獲得した右腕の動きを、映像を通して徹底的に分析し、抽出したエキスを自らに注入した。

 宮崎キャンプ時と比べて、今の石川の右腕が出てくる位置は15度近くも下がり、もはやサイドスローにも映るほど。「今までの投げ方だと、怪我のリスクが上がる。体にかかる負担も違う。体の末端で投げずに、体の連鎖で投げる感じです」。自らのフォームについて石川がそう語っていたのは、開幕前の5月下旬のことだ。
 
 その成果は顕著だった。8月1日まで4勝負けなし、5試合連続でQSを達成するなど安定感が出てきた。さらに奪三振率も10.75と力で相手も圧倒。短期間でのフォーム改造を「試行錯誤の上、かみ合わせてきた。さすがプロですね」と称賛する池田氏は、実はまだ石川と直接会ったことがないのだという。コロナ禍の中、グループLINEを通じて石川が画像や質問を送り、それに池田氏がアドバイスや提案を返信する形でコミュニケーションを進めてきた。

「コロナ禍がなければ関東遠征で会いましょうと言っていたんですが、今はなかなか難しいですね」と池田氏。石川の現状については「実指導をしていないので、下半身の動作や腕の振りについてはまだ課題が残ると思っていますが、(右ヒジなどに)痛みなく投げられていると本人が言っていたので、今の状態が現時点ではベストかなと思っています」。

 フォーム改造のオンライン指導。これもまた、“令和の新スタイル”なのかもしれない。

 右ヒジの疲労を考慮し、工藤監督は「1回(先発ローテを)飛ばす」と8月6日に石川の出場選手登録を抹消した。しかし、この期間もきっと、また新たな進化のきっかけをつかむ貴重なリフレッシュ期間につなげていくような気がしてならない。

取材・文●喜瀬雅則(スポーツライター)

【著者プロフィール】
きせ・まさのり/1967年生まれ。産経新聞夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で 2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。第21回、22回小学館ノンフィクション大賞で2年連続最終選考作品に選出。2017年に産経新聞社退社。以後はスポーツライターとして西日本新聞をメインに取材活動を行っている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)「不登校からメジャーへ」(光文社新書)「ホークス3軍はなぜ成功したのか?」 (光文社新書)

DAZNなら「プロ野球」「Jリーグ」「CL」「F1」「WTAツアー」が見放題!充実のコンテンツを確認できる1か月無料体験はこちらから

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号