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プロ野球

プロ野球は“超格差社会”…「コロナ条項」、球団間で異なる年俸査定。不平等の解決には何が必要なのか

中島大輔

2021.01.18

 日本で馴染みのない同制度は、チームごとに年俸総額の上限を定めるものだ。朝日新聞DIGITALの記事『スポーツビジネスは露出から課題解決へ 鈴木友也さん』で、スポーツマーケティングコンサルタントの鈴木氏はプロ野球にサラリーキャップ制を提唱した上で、その意義をこう説明している。

「リーグ全体の収益を労使で共有し、分配する仕組みで、チームの経営情報の透明性が担保されます。収入が増えれば年俸も上がる。選手とチームが同じ船に乗っていて、労使が協力して事業を拡大していく原動力になるうえ、非常時にも危機を一緒に乗り越えやすい。経営の安定性と戦力の均衡を保つことができる」

 過去に選手会でサラリーキャップ制度の導入について話し合ったことはあるのか。そう聞くと、「今のところはない」と森事務局長は答えた。確かに選手自ら、年俸の上限を定めるという発想にはなりにくいだろう。ソフトバンクや巨人のように、資金力に優れる球団にとって受け入れにくいルールとも考えられる。
 
 一方でサラリーキャップ制度は、日本球界が抱える課題を乗り越える第一歩になり得るものだ。12球団の戦力均衡が進み、選手会が求める経営情報の開示も進むだろう。両者が“プロ野球事業のパートナー”という意識を強め、ビジネス的にも成長していけば、その恩恵は年俸アップという形で選手たちにも返ってくる。

 ただしサラリーキャップ制の導入だけではなく、同時に「NPB.TV」(NPBとしてのデジタル放送事業)など球界全体としてのビジネス化や、レベニューシェアリング(テレビ放映権や入場料収入などの収益をリーグ全体でプールし、分配する制度)、さらにプロ野球が将来的にどこを目指すのかという理念やビジョンの議論も必要だろう。

 いずれにせよコロナ禍で明らかになったのは、プロ野球の根底を支える野球協約の“不備”だ。世界中の人々が自身や社会のあり方を改めて見つめ直している今、プロ野球もこれまでの常識をひとまず脇に置き、より良い未来を模索するため、あらゆる面から徹底的に話し合うべきだ。

取材・文●中島大輔

【著者プロフィール】 
なかじま・だいすけ/1979年生まれ。2005年から4年間、サッカーの中村俊輔を英国で密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた『野球消滅』。『中南米野球はなぜ強いか』で2017年度ミズノスポーツライター賞の優秀賞。近著に『プロ野球FA宣言の闇』など。

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