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MLB

巨人のドラ1から用具係へ。どん底の入来祐作を支えた桑田真澄の金言「謙虚でいるんだぞ」

北野正樹

2021.02.24

入来コーチと話をして笑顔が戻った谷岡投手。(入来コーチが短い時間、マスクを外した時に撮影)。写真:北野正樹

入来コーチと話をして笑顔が戻った谷岡投手。(入来コーチが短い時間、マスクを外した時に撮影)。写真:北野正樹

 ここからも苦難の道が待っていた。打撃投手なのにストライクが入らず、地面にボールをたたきつけてしまう。縦横4メートルはある大きい打撃ゲージの枠の中にも、投げることが出来なくなってしまった。イップスだった。打者が打ちやすい球を投げようと意識すればするほど、ボールがうまく手から離せなくなってしまうほどの重症。2年でお役御免になってしまい、今度は1軍用具係に転身することに。

「『(巨人のドラ1が)気の毒に』という目で見られたこともあるが、世間とはそんなもの。野球界で仕事をさせてもらってありがたいとしか思わなかった。(そのような経験を)苦労だと思ったこともない」と入来は言い切る。

 今季のオリックスの首脳陣は1、2軍監督の区別があるだけで、キャンプでは部門ごとにすべての選手をすべてのコーチが見るが、公式戦で入来が担当するのは2軍投手コーチ。選手には常に笑顔で接する。時には肩をポンポンと叩き、スキンシップを図る。キャンプ中盤の2月16日、大阪の球団施設・舞洲で調整していたC組が合流した際には、サブグラウンドの隅で、合流したばかりの育成で高卒2年目の谷岡楓太投手と話をして「プロ入り前に思い描いていた野球人生と違うかもしれない。これから一緒に考えていこう」と声をかけ、何度も肩をたたいて激励する姿があった。話し終わった谷岡投手に笑顔が戻った。
 
「プロの野球選手として少しは成功し、いろんな経験もできたので、スーパースターの選手にも隅っこにいる選手にも、いろんな立ち位置で話が出来る。まだ何も見えていない若い選手には『こうしろ』ではなく、一つ一つ丁寧に話をしなくてはいけない。いろんな話が出来る関係になりたいと思う」

 そんな姿を、森川秀樹・球団本部長は「グラウンドの隅々まで目を配り、動き回って選手に声をかけるなどバイタリティーあふれる指導で、初めて見る投手にも短期間で距離を縮めている。前向きで実績もある。様々な経験は、若い選手らにとって参考になるはず」と評価。福良淳一GMも「あれだけの経験を、若い選手にいろんな形で伝えてほしいい」と期待を寄せる。

 昨年は、ソフトバンクのアカデミーで、子供たちを相手に野球の底辺拡大や地域貢献に携わった。「何も知らない小学校低学年の子供たちに接して野球を教えるなんて、こんな幸せなことはなかった。野球界に入って、最も穏やかに過ごせた1年だった」と、かつてないほど心身ともに充実した期間だったそうだ。
 

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