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MLB

大学通算1登板、右ヒジ手術。日本プロ野球が見送った“独立リーガー”松田康甫はなぜドジャースと契約できたのか

中島大輔

2022.01.18

 松田がNPBの注目を集め始めた4月、色川GMはMLB球団にプレー動画を送って売り込みをかけ始めた。ドジャースは巨人戦の投球を見て、特に155キロの4シームと鋭く落ちるスプリットに惚れ込んだ。

「23歳は若くないが、年齢を重ねすぎているということもない」。環太平洋スカウティングディレクターのジョン・ディーブルは、ドジャースの判断をそう明かす。トミー・ジョン手術を受けた後でも、球団には多くの投手を復帰させてきたノウハウと環境があり、松田は十分に可能性があると考えた。

 無名右腕の今後について、ディーブルはこう見据えている。

「トミー・ジョン手術を受けて、まず大事になるのはリハビリのプロセスだ。ドジャースにある施設で、ゆっくり時間をかけながら、回復するまで全力を注ぐつもりだ。経過を見ながら、7ヵ月後くらいに復帰できるように。復帰の時期は経過次第で変わってくるが、23年にはしっかり投げられる状態を作って、マイナーリーグのステップを踏んでいけるようにと考えている」

 MLB最高峰の資金力を誇るドジャースにとって、マイナー契約の投資リスクは極めて少ない。加えて、数々の投手をトミー・ジョン手術から復帰させてきたノウハウもある。一般論として30歳でメジャーデビューを飾る選手もおり、松田に可能性を見込めれば、一定以上の時間をかけて育てることも可能だろう。いつかモノになれば、リターンは大きなものになる。

【動画】独立リーグからメジャーへ! “シンデラ”・松田康甫の投球がこれだ!
 
 しかし、NPB球団には「投資対象」に映らなかった。実績がなく、いつ花開くとも分からない投手に、たとえ育成契約であろうと投資するのは難しい。それが日本の“常識”だろう。

 拓殖大時代に公式戦で1度しか投げられなかった大型右腕が、ドジャースと契約するというシンデレラストーリー。その物語は始まったばかりで、ハッピーエンドを迎える確率は決して高くない。

 しかし松田は、子どもの頃から描いてきた「世界一の選手」という挑戦のスタートラインに立つことができた。

 茨城球団との出会い、そこで出会った新たな発想と上達法、そしてドジャースに与えてもらったチャンス――。無名右腕がつかんだ移籍には、日本球界にとって多くの示唆が含まれている。

取材・文●中島大輔
 
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