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MLB

【MLBから何を学んだか】「僕はイチローさんや大谷くんとは違う」岩村明憲がつかんだ独自のサクセス・ストーリー<SLUGGER>

氏原英明

2022.08.21

 メジャー2年目の08年、岩村のセカンドへのコンバートは成功した。152試合に出場し、175安打をマーク。出塁率.349を記録してリードオフマンを全うし、球団創設以来初のリーグ優勝に大きく貢献し、下位チームからの下剋上を見事に完成させたのだった。

 サクセスストーリーの実現に何が必要だったかと問うと、岩村は熱弁を振るった。

「当たって砕けろですよ。まず行動するということです。英会話でもそう。僕は監督のところにも通訳なしで話をしにいきました。そうすることによって、生まれるものがあった。ある程度の準備は大事だけど、あとはもう腹くくってやるしかない。やるしかないわけであって、不安になっても始まらない。

 日本人内野手はメジャーで通用しないと言われますけど、自分たちを押し殺しながらチームにアジャストしていこうという部分で僕たちは戦っている。チームが勝つために何が必要かっていうことです。松井稼頭央さんや井口資仁さんも、自分の成績が落ちてもチームに必要とされる選手になった。

 だからこそ、みんなワールドシリーズを経験できたわけですよ。3000安打を打たないと成功とは言えない? ホームラン40本ぐらい打たないと成功じゃない? それは違うんじゃないかって。やっぱり内野手が黒子に徹しない限り、チームは勝てないと思いますから」
 
 だからこそ、日本時代は受け入れなかったコンバートにも挑戦し、バッティングスタイルまで変えた。いわば、サクセスのためのアクションを果たし、岩村は「世界が変わった」。メジャーリーグに挑戦して、自身が学んだ大きな財産だった。

 岩村は、今、そうした経験のすべてを独立リーグという舞台で生かそうとしている。BCリーグ・福島レッドホープスの監督を務める男は、指揮官としてもアメリカの経験が糧になっていると語る。

「どんな球場であっても『ここで試合をやる』と言われたらやんなきゃいけない。ナイターが暗くてもやんなきゃいけないのが今の独立リーグのなんですよ。言い訳しているよりも、出されたメニューを食べるしかない。やらない選択肢はないわけで、やるしかないんだったら、どうせならトコトンやりましょう。楽しみなさいって話を選手たちには伝えています」

 岩村の“監督像”は、メジャーで仕えた恩師から大きな影響を受けている。
(続く)

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
 

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