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侍ジャパン

ベールに包まれていた投手起用が判明。球数制限下のWBCでカギとなる“ジョーカー的存在”とは?<SLUGGER>

氏原英明

2023.02.23

 特に、伊藤にはその意識が高い。一度だけ入ったブルペンの投球練習では走者を想定してのピッチングをするなど、準備に余念がなかった。すでにその役割を覚悟していたのだろう。

 伊藤はこう話している。

「『この回の頭から行くよ』っていう展開はなかなか難しいと思う。球数制限などいろいろな状況があるので、そこにどう対応していくかが大事だと思っています。今年はずっとオフからのテーマとして、少ない球数で肩を作るようにと考えてきました。無駄なボールを投げすぎないことを普段から意識して、身体の調整はそれ以外のところで補っていくようにしていますね」

 アップが足りないと感じると、早めにグラウンドに来て体を動かし始める。ボールを投げる前の準備をしっかりすることで、球数を減らしていく。そうして登板に備えるのだ。

 伊藤は「肩慣らしのキャッチボールはしない」と言い切る。その球数こそが無駄球になるためで、極力試合に直結するよう心がけているのだ。

 伊藤のように、指揮官に言われるまでもなく準備を進めてくれる選手の存在はありがたいだろう。いわばジョーカー的な存在と言える。

 一方、もう一人のジョーカーである松井はやや調整が遅れている。ただ、ブルペンには連日入って本来の調子を取り戻そうとしている。松井は前回のWBCでも、キャンプ中はあまりいい方ではなかったから、今回も徐々にアジャストしてくれるに違いない。
 
 何よりも、どのタイミングで準備していくかは松井の一言が重要になってくるはずだ。

「調整に関しては6年も前のことなので、身体も違いますし、同じではないと思ってやっています。ブルペンでの調整に関しては、今はまだみんなでブルペンで登板を待つという状況をやっていないので、その時になったら、また感じるものもあるのかなと思います」

 先発が固まり、第2先発、クローザーとその形が見えてきた。

 もちろん、これで全てが決まりではない。試合を重ねていく中での微調整は行われていだろうし、栗山監督の方針として全ての試合を同じ形になくてもいいというのもある。

 「もちろん、その試合の日においては試合が始まる時には自分がどこで投げるかというのは出してあげないと準備できないんだけど、それが明日は違う。毎日違っていいと思う。決める方が良くないかなと思っている」

 対外試合のスタートに向け、侍ジャパンの方向性が見えてきた。見る方はもちろん、力が入らないわけにはいかない。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
 

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