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MLB

「本能的に打つのも大事なんで」鈴木誠也の日本人選手初“3打席連続本塁打”をもたらした新打撃フォーム<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.05.23

 2ボールと先行し、ゲイジがストライクを投げたいタイミングを鈴木は見逃さなかった。3球目の内寄りの速球を叩いてレフトスタンドに放り込んだ。打球初速98.8マイル(約159キロ)、打球角度26度の典型的なアーチを描いての今季3号だった。

 いい流れは、翌17日も続いた。アストロズの先発はJP・フランス。口ひげで人気が出始めたピッチャーだが、実績はバルデスやハビアには敵わない。カッター、スライダー、カーブといったいわゆる「曲がる系」が全投球の58%を占めるタイプだ。

 鈴木はその「曲がる系」を狙っていた。

「ある程度、投球の動画は見てますけど、実際に立ってみないと曲がり幅だったり、まっすぐのスピード感だったりっていうのは分からないので、すごく外に決まったスライダーはすごくいい切れだったし、ただ、こう抜けてきた球はチャンスがあるかなと思っていた」

 自分の技術や精度を高めるのではなく、相手の投手との対戦に集中できているというだけで、状態が上向いていることは明らかだった。結果は2打席連続、前日の最終打席から数えれば日本人初の3打席連続の本塁打である。いずれもスライダーが抜けてきたところを、前に出されることなく身体をしっかり止めてバットを振り抜いての一撃だった。打球初速は101.2マイル(約163キロ)と104.3マイル(168キロ)。打球角度は34度と38度。いずれもホームランにしかならない打球で、左翼観客席のはるか上空を飛び、壁にかかった看板付近に直撃した。

 鈴木の2本塁打などで7回まで7対1とリードし、連敗脱出の出口が見えたカブスだったが、救援投手陣が炎上し、8回に2点、9回に一挙4点を奪われて衝撃的な逆転サヨナラ負けを喫した。3連戦に全敗して今季最長の5連敗となった。
 
 誰か一人がヒロイックな活躍を見せても、他の誰かがミスをし、それが積み重なり、9イニングが終わった時に相手よりも多く失点していれば負けてしまうのが、野球というものだ。ベースボールという名のゲームはあくまで勝つことが目標であり、カブスはヒューストンでその目標を一度も果たせなかった。

 だから、鈴木も他の選手同様、たった1試合、たった1週間、打撃の結果が良かっただけで、一喜一憂することはない。アストロズとの3連戦、彼は11打数3本塁打5打点で、打率を.286に上げた。6割台に低迷し、シカゴのメディアが懸念していたOPS(出塁率+長打率)も.863まで上がるなど前途洋々に思えるが、日本時代も含め、もうプロの世界で10年以上も生きてきた彼に楽観ムードはまったくない。

「これがまた(野手の)正面突く時も来ると思います。今は本当にこうやっていい結果が出ているだけで、また次、悪くなった時に修正して、なるべく早くいい状態に持っていけるようにっていうのは常に考えている。何が原因で良いのか、何が原因で悪くなるのかっていうのはある程度しっかり考えながら、日々、過ごしたいなと思っています」

 シーズンの4分の1が終わり、各チームの今季の実力がそろそろ見え始めてきた5月、鈴木誠也は確かな足取りで、本格的なベースボール・シーズンに突入していこうとしている――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
 
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