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プロ野球

3週間だけの米国留学の体験を糧に――西武ファーム投手コーチ、大石達也の理想の指導者像<SLUGGER>

氏原英明

2023.06.14

 だから、今も指導にあたる際には自分の感覚で選手にアドバイスすることはない。ひとまずバイオメカニクスの専門家に相談し、自分の考えていることと専門知識のすり合わせをしてから選手に話すという。

「帰国してからコーチになった時に、トレーニングなどの理論は勉強しました。なので、自分の知識もついてきているけど、それを選手に言うのではなくバイメカグループの人に『こう言うことですよね』と聞きに行きます。もちろん、一致したりしなかったりもあるんですけど、それを聞いた上で、選手と話します。時には、僕は入らずに選手と直接話してもらう時もあります。そうしてみて思うのは、僕から言われるよりも、納得しているなと言うのは感じるんです。だから、僕はバイオメカニクスグループを活用しています。そこはアメリカで学んだことかな」

 マイナーリーグではピッチング練習の際に、投球を分析する機器ラプソードが使われ、たくさんの専門家が助言を与える。投球するたびに回転数や回転効率などの話をして、改善を試みるという。また、球団施設にはバイオメカニクスやアナリストたちの部屋もあり、そこに選手たちが相談に来ることも多々あるそうだ。

 たった3週間の体験だったが、大石は日本とは異なる光景を見ることができた。
 
「コーチになる人に限らず、誰が体験しても絶対プラスになる」と、大石は留学の効果に太鼓判を押す。

 少なくとも大石には、今まで感じたことがなかったブルペンでの細かな計画やコーチの役割分担という視点が生まれたわけだから、自身にしかこなせないポジションが一つ出来上がったと言えるかもしれない。コーチに向いていないと思っていた彼からすれば大きな変化と言えるだろう。

「選手に近いコーチでいたいなとは思います。元々はコミュニケーションを取るのは苦手なタイプでしたけど、たわいもない話でもいいので、選手に寄り添えるようになりたいですね。本当に、選手が良くなってくれたらそれで嬉しい。試合で抑えたり、勝ったりしている姿を見ていると本当、自分の時より嬉しいですね」。

 かつて大学野球界を騒がせた剛腕は、プロではその才能を開花させられなかった。だが、今はコーチとして、第二の人生を歩み始めている。

 たった3週間なのか、貴重な3週間だったのか。

 その答えは、彼のコーチ人生が導き出してくれるに違いない。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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