日本人の右打者が成功した実例が少ない、などという事実はきっと、彼にとってはどうだっていいことなのだ。日本人という括りならもっと凄いやつがいる。
大谷翔平だ。
大谷は左打者だが、そんなの関係ない。
メジャー1年目の18年に22本塁打、翌年も18本塁打、そしてMVPを獲得した21年には46本塁打を記録している。今年だって、シーズン最後の25試合を欠場することになったが、それでも規定打席数に達して打率.304、44本塁打、95打点、20盗塁、OPS1.066という驚異的な数字を残している。
だから、19本塁打で満足なんてしていられない。「大谷は別格」なのを承知の上で、後に続いた者はそれを乗り越える努力をする。それがどんなに険しく、高く聳え立った壁だろうが、たとえ1センチずつ、ほんの1ミリずつだったとしても、日本人選手の頂点に立つ者を目指して、這い上がっていかねばならない。
なぜなら、「諦めたらそれで終わり」だからだ。
今季19号本塁打を放った同じ日、大谷が右ヒジの手術を終えたというニュースが伝えられたが、鈴木が思うことはそう多くなかった。
「翔平はすでに、すごい成績を上げてましたし、オフの過ごし方であったりっていうのは、僕も翔平の姿を見てたりして、頑張っているのを知っていたんで、すごく残念な気持ちもあります......本人が一番、残念だと思う。でも、彼なら多分、すぐ復活して、また同じような活躍をしてくれると思うんで、僕もしっかり......負けないように頑張りたい」 では、投打二刀流の大谷とは違い、投手専業の藤浪は鈴木にとってどういう存在なのだろうか。ワイルドカード争いでカブスが苦戦する中、藤浪がオリオールズの主力選手の一人として、プレーオフ進出を決めた。「藤浪の活躍は励みになるのか?」と問うと、鈴木はこう答えている。
「励みになるとかはないですけど、元々持っているモノはすごいですし、それを自分でつかみ取って、ああいうチームで行けたっていうのは、実力が認められたってこと」
あいつは凄いんだから、当たり前でしょ? とでも言いたげな感じだった。
大谷は凄い。藤浪も凄い。そんなことは分かっている。だからこそ、「負けないように」頑張るだけ。
類まれなる才能を持った同期の3人。
これからも、さまざまな試練を乗り越えて、ただひた向きに、前へ前へと、進み続けるのみだ――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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これからも、さまざまな試練を乗り越えて、ただひた向きに、前へ前へと、進み続けるのみだ――。
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