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MLB

サイン盗みにタンキング…“球界で最も嫌われている球団”アストロズがもたらした「功罪」

出野哲也

2020.01.30

30歳を過ぎてシンカーボーラーから本格派へ変身を遂げたモートン。アストロズお得意の“魔改造”の代表格だ。(C)Getty Images

30歳を過ぎてシンカーボーラーから本格派へ変身を遂げたモートン。アストロズお得意の“魔改造”の代表格だ。(C)Getty Images

■最先端データの活用で球界の流行発信地に

 それでも、アストロズが最も先見の明に富んだチームであることは、正当に評価しなくてはならない。ここからは「功」の部分に目を向けよう。

 ルーノーはアストロズのGMに就任した際、「グラウンド・コントロール」と呼ばれる最新鋭のデータベースを作り上げた。ライバル球団の選手はもちろんアマチュアのデータも寸分洩らさず蓄積し、詳細に解析できる優れ物だ。

 なお、システムの構築を主導したのは『ベースボール・プロスペクタス』からヘッドハンティングしたケビン・ゴールドスタイン。サイン盗み騒動の首謀者の一人とも目される人物である。他球団でも多かれ少なかれこうしたシステムを導入しているが、グラウンド・コントロールの洗練度は他の追随を許さないと言われる。
 
 その成果の一つが、14年にコリン・マキューを獲得したことだ。加入時点で通算防御率8・94、二流とすら呼べない成績だったが、アストロズはカーブの回転数の高さに目をつけた。球団の指導で投球スタイルを変えたマキューは14~15年に合計30勝を稼ぎ出した。17年に獲得したチャーリー・モートンはシンカーボーラーから4シーム中心の配球にモデルチェンジし、世界一の胴上げ投手となった。同年のリーグ優勝決定シリーズ第7戦における、ランス・マッカラーズJr.の“伝説の24球連続カーブ”も、ヤンキース打線がカーブを弱点としていることを徹底的に調べ上げた成果だった。

 モートンのような一流半レベルを一流へ開花させられるのなら、すでに一流である投手を超一流へと進化させるのも可能だ。17年途中にトレードで加入したジャスティン・バーランダーは、リリースポイントを変えて4シームの回転数が増加。18年に加入したゲリット・コールも、シンカーとチェンジアップを減らしてレパートリーを整理し、19年のサイ・ヤング賞投手投票はこの2人が1、2位を占めた。
 

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