さらに救援まで含めれば、タイガース時代の2016年に新人王に輝いた元先発のマイケル・フルマー、今季序盤、カブスで抑え役も務めたポーター・ホッジ、100マイル超の剛速球が武器のネイト・ピアソン、メジャーで２ケタ勝利を挙げたこともあるキーガン・トンプソン、過去数年、メジャーを経験しているイーサン・ロバーツ、トム・コスグローブ、ギャビン・ハニーウェル、ケイレブ・キリアン、ルーク・リトル、タイソン・ミラー、ブランドン・ヒューズ、ジャック・ニーリーと、「ゴロゴロ」どころじゃないほど、「代わり」になるピッチャーが控えている。

　それら元メジャーリーガーの中で現在、先発としてカウントされているのは左腕ウィックスと、他球団で名を成した前田とウッドフォードの３人だけだ。だが、６月に入って、元ソフトバンクのコリン・レイや実質２年目のベン・ブラウン、有望株のケイド・ホートンらが占めていた先発３～５番手に陰りが見え始めたことで、彼らのチャンスは日に日に膨らんでいた。

　実際、ブラウンは６月23日のカーディナルス戦で５回９安打８失点と炎上してマイナーに降格し、その代わりに救援のホッジが昇格した。ついでに書いておくと、今永の昇格に伴い、ほんの数日間メジャーに昇格していたフルマーが自由契約になっている。

　今永が見たマイナーリーグのリアル。だがしかし、彼はＩＬ入りする前からずっと、ある種の危機感を持って行動していた。

「真っすぐが去年みたいに通用しなくなってきているなというのは実感しているんです。まあ、通用しないというよりは、前ほどの反応を示してくれないというか。データが出揃ってるんで、大体、僕ならここに投げるとか、そういうのが分かってるんで。低めのスプリットも、『ああ、今の前だったら絶対に振ってたな』と思うようなのも、増えてきましたし、だからこそ、前よりも大胆に行けるところもあるんですけど」 　紙幅の関係で割愛してしまうが、空振り率や奪三振率だけではなく、あの独特の真っすぐ＝４シーム・ファストボールとスプリットを武器にしていることから生まれるさまざまな数値は今季、相対的に伸び悩んでいる。もちろん、それは今永自身もよく心得ている。

「スライダーに関してはもうずっと練習しているボールで、割と良い感覚が出てきてますし、真っすぐが落ちてきた分、スライダーを狙ってない分、数値が良いんだと思います。でも僕の場合、真っすぐ待ってる場面でも、あえて真っすぐ投げるってのが生命線みたいなものなんで、そこは怯まずにどんどん投げていかなければならないと思ってる」

　次戦は現地７月２日（日本時間３日）、地元シカゴでのガーディアンズ戦だ。

「まあ、ピッチングって、いたちごっこじゃないですけど、うまく散らばせていけばいのかなと思う」

　昨季、１度だけ敵地で対戦し、５回で２本塁打を含む７安打７失点（自責点３）と苦戦した相手に、今永昇太はどんなパフォーマンスを見せてくれるだろうか――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、Ｆ１ＧＰやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター＠KATNGO

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