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再びあの景色を見るために――古豪ピストンズ復活のキーマンが語る、“苦難のルーキーイヤーから得た学び”と“未来への決意”<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2025.11.07

1年目にNBA史上ワーストの28連敗を経験したトンプソンが、ピストンズ復活の経緯を綴った。(C)Getty Images

 ウエスタン・カンファレンスで昨シーズンのチャンピオン、オクラホマシティ・サンダーが快調なスタートを切っているのとは対照的に、東の王者インディアナ・ペイサーズは、エースのタイリース・ハリバートンの不在も響いて最下位の1勝7敗(現地11月6日時点)と苦戦中だ。

 代わってイーストでは、シカゴ・ブルズやデトロイト・ピストンズら、数シーズン前まで上位争いとは縁がなかった球団の躍進が目覚ましい。

 とりわけ一昨季にリーグワーストの28連敗を喫し、フランチャイズ史上最低の14勝68敗を記録したピストンズの成長は見事と言うほかない。

 そんなチームのどん底シーズンにルーキーとして迎えられたアサー・トンプソンが、最近『The Players' Tribune』に寄稿したコラムの中で、苦難の時からいかにチームが再生したかを綴っている。

 2023年のドラフトで全体5位という高順位で指名を受け、「僕のキャリアはここから始まる!」と胸を踊らせたトンプソン。デビュー2戦目と3戦目に連勝したところまではよかったが、そこから未曾有の28連敗が待ち受けていた。
 
 高校卒業後に在籍した若手のリーグ、オーバータイム・エリートでも2年連続で優勝するなど、順風満帆だったそれまでのキャリアで経験したことのなかった事態に、「2勝29敗の時点でまだ残り51試合。半分も消化していなかった。途方もなくシーズンが長く感じられて、『燃え尽きるってこういう時に起きるんだ』と初めて知った」と、メンタル的にも疲弊していたと振り返る。

 個人的にも、血栓除去のために3月以降の試合を全休するというつらいルーキーイヤーとなった。

 しかし同年のオフ、12年目のティム・ハーダウェイ Jr.や14年目のトバイアス・ハリスといったベテランが加入したことで、チームは大きく動き始めた。

 トンプソンいわく、2人は夏の間のキャンプから集中して取り組むことを選手たちに求め、少しでも緩みが見られると「勝つチームというのは、そういうことはしない」と戒めたという。そこでトンプソンら若手選手たちは「勝つチームになるためにやるべきこと」を叩き込まれた。

 とりわけ以前にもピストンズに所属し、2015-16シーズンにはプレーオフ進出も経験していたハリスは、「デトロイトに再びプレーオフの景色を呼び戻すんだ!」と仲間たちに訴えかけた。

 それがチーム全体の目標になり、トンプソン自身も「だんだんハリスの言葉が現実になることを信じられるようになっていった」と語っている。

 そして実際にピストンズは昨季、6シーズンぶりにプレーオフ進出を果たした。ニューヨーク・ニックスに2勝4敗で敗れて1回戦敗退に終わったが、前年が球団史上最悪のシーズンだったことを思えば、奇跡のような復活劇だった。
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「デトロイトで頂点に立ったチームには必ず、粘り強いディフェンダーがいた」