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NBA

【名作シューズ列伝】スペシャルBOXの走りはユーイング?自社ブランドだからこそできたオリジナリティ

西塚克之

2020.02.28

ユーイングはバルセロナ五輪で平均9.5点、5.2リバウンド。クロアチアとの決勝では15得点、6リバウンドをあげて優勝に貢献した。(C)Getty Images

ユーイングはバルセロナ五輪で平均9.5点、5.2リバウンド。クロアチアとの決勝では15得点、6リバウンドをあげて優勝に貢献した。(C)Getty Images

 人に歴史あり。バスケにスーパースターあり。スーパースターにシグネチャーモデルあり。シグネチャーモデルにBOXあり!

 第2回は1992年に発売されたパトリック・ユーイングの「ECLIPSE」。



 ユーイングは1985年のドラフトでニューヨーク・ニックスに1位で指名され、マイケル・ジョーダン率いるシカゴ・ブルズと幾度も死闘を繰り広げた1990年代を代表するセンターでした。

 同じ時代に、ジョーダンがいたことでチャンピオンリングを手に入れることができなかった不運のプレーヤーでしたが、ニックスで着用した33番はチームの欠番となっており、2008年にはバスケットボール殿堂入りを果たしています。

 彼を世界的に有名にしたのは、そのジョーダンとチームメイトになった1992年バルセロナオリンピックの“ドリームチーム”。その大会で着用したシューズがユーイング自身が立ち上げたブランド『ユーイングアスレチックス』からリリースされた「ECLIPSE」でした。



「ECLIPSE」のBOXは、全体をシックにブラックでまとめ、上ぶたにはユーイングのゴリラダンクを力強く威厳すら感じるモノクロの点描で表現。中央には金メダルを模したマークが入っています。
 
 特筆すべきは、デザインのシンプルさです。昨今のスペシャルメイクシューズのBOXでは考えられない落ち着きよう。

 マジック・ジョンソンの引退、ジョーダンブーム。アメリカ代表の復権という使命、バルセロナオリンピック、この時代に奇跡のように存在したスーパースターたち……。期待通り圧倒的な強さでの金メダル獲得は、数々の偶然が起こした奇跡でした。

 世界中にドリームチームショックを与え、センセーションを巻き起こした偉業を考えれば、このBOXは当時の世の中を冷静に傍観しているようにさえ見えます。

 他のドリームチームのメンバーは、NIKE、convers、LAギア、AVIAなど、ワールドワイドなシューズメーカーからリリースされた高性能シューズを着用していました。

 これだけのメーカーが特別モデルを製作したため、さぞかし華やかなBOXだろうと想像してしまいますが、実際は市販の量産タイプと同様のBOXによる販売でした。

 嘘のような話ですが「ECLIPSE」のBOXが一番凝ったデザインだったのです。

 これはユーイングの独自ブランドだからこそ臨機応変に対応できたものだったのかもしれません。

 1992年以前にもスペシャルメイクのBOXは存在したものの、あくまでも年間の販売計画に則ったデザインでした。「ECLIPSE」は、プロモーション的にデザインされたシグネチャーモデルBOXの走りと言える、貴重な一足と言えるでしょう。

文●西塚克之

【著者プロフィール】
西塚“DUKA”克之/日本相撲協会公式キャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」の作者として知られる人気イラストレーター。入手困難なグッズやバッシュを多数所有する収集家でもあり、インスタグラム(@dukas_cafe)では、自身のシューズコレクションを公開中。ダンクシュートでは名作シューズ列伝『SOLE&SOUL』を連載している。

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