バスケットボールの腕に覚えのある者なら、誰でもチームの中心となって脚光を浴びたいと思うだろう。それが優勝に縁のない下位チームであったとしても、注目の的にはなれるし高い給料も得られる。その一方で、どんな役割であっても、チームとして勝利を手にしたいとの願望もまた、皆が持っている。だが、いずれも同時に叶えられるのはごく一握りのスーパースターだけで、それ以外の選手は「弱いチームの主役」、もしくは「強いチームの脇役」のいずれかに甘んじなければならない。
ロン・ハーパーはその両方を経験している。NBAでの最初の8年間はエースとして、最後の7年間はチャンピオンチームでロールプレーヤーに徹し、いずれの立場でも称賛を得た、数少ない選手の一人だった。
◆ ◆ ◆
ロサンゼルス・クリッパーズ在籍時は「俺はいま刑期中なのさ」と言って批判を浴びたこともあったが、そこはハーパーにとって良い思い出の詰まったチームだった。
「もし殿堂入りできるなら、クリッパーズの一員として受け入れられたい。自分がチームを背負って立つ選手だと、証明できるチャンスをくれたところだからね」
1993-94シーズン終了後、FAとなったハーパーにシカゴ・ブルズから声がかかる。1年前にマイケル・ジョーダンが引退したブルズは、後継者として期待されていたトニー・クーコッチが今ひとつだったため、ハーパーにその役割を期待したのだ。
ところが移籍1年目は、キャリア最悪の不振に陥る。前年20.1点だった得点は約3分の1の6.9点にまで下降。2月には先発SGの座を追われ、3月にジョーダンが復帰してからは出場時間も激減してしまった。
「MJ(ジョーダン)が戻ってくるのはわかっていた。毎日のように練習場に顔を出していたんだから。それでもまだ戻るつもりはないと言い続けていたから、彼に言ってやったんだ。自分の心に正直になれとね」
居場所を失いそうになったハーパーは、自ら新たな道を切り開く。「(ヘッドコーチの)フィル・ジャクソンと話し合って、こう言ったんだ。このチームにはMJも、スコッティ(・ピッペン)も、クーコッチもいて、俺がシュートを打つチャンスは1試合に5回もない。だからポイントガード(PG)をやりたいとね。そうしたら、『10~12本シュートを打たせろと言うのなら、君をトレードするつもりだった』と返されたよ」
ロン・ハーパーはその両方を経験している。NBAでの最初の8年間はエースとして、最後の7年間はチャンピオンチームでロールプレーヤーに徹し、いずれの立場でも称賛を得た、数少ない選手の一人だった。
◆ ◆ ◆
ロサンゼルス・クリッパーズ在籍時は「俺はいま刑期中なのさ」と言って批判を浴びたこともあったが、そこはハーパーにとって良い思い出の詰まったチームだった。
「もし殿堂入りできるなら、クリッパーズの一員として受け入れられたい。自分がチームを背負って立つ選手だと、証明できるチャンスをくれたところだからね」
1993-94シーズン終了後、FAとなったハーパーにシカゴ・ブルズから声がかかる。1年前にマイケル・ジョーダンが引退したブルズは、後継者として期待されていたトニー・クーコッチが今ひとつだったため、ハーパーにその役割を期待したのだ。
ところが移籍1年目は、キャリア最悪の不振に陥る。前年20.1点だった得点は約3分の1の6.9点にまで下降。2月には先発SGの座を追われ、3月にジョーダンが復帰してからは出場時間も激減してしまった。
「MJ(ジョーダン)が戻ってくるのはわかっていた。毎日のように練習場に顔を出していたんだから。それでもまだ戻るつもりはないと言い続けていたから、彼に言ってやったんだ。自分の心に正直になれとね」
居場所を失いそうになったハーパーは、自ら新たな道を切り開く。「(ヘッドコーチの)フィル・ジャクソンと話し合って、こう言ったんだ。このチームにはMJも、スコッティ(・ピッペン)も、クーコッチもいて、俺がシュートを打つチャンスは1試合に5回もない。だからポイントガード(PG)をやりたいとね。そうしたら、『10~12本シュートを打たせろと言うのなら、君をトレードするつもりだった』と返されたよ」
関連記事
- “下位チームの主役”から“強豪チームの脇役”へ――酸いも甘いも知り尽くしたロン・ハーパーのキャリア【NBA名脇役列伝・前編】
- “ドック”の由来は着ていたTシャツ。現役屈指の名将リバースは、いかにしてその統率力を培ったのか【NBA名脇役列伝・前編】
- 「選手が最もプレーしたいHC」1位の“独裁者”リバース。カリスマ指揮官は名声を不動にできるか【NBA名脇役列伝・後編】
- 練習要員から大人気選手へと上り詰めたジョン・スタークス。そのきっかけはひとつの“故障”だった【NBA名脇役列伝・前編】
- “コビーの最大の理解者”デレック・フィッシャー。バスケットボールと真剣に向き合い続けた“努力の男”の物語【NBA名脇役列伝・前編】